第28話 精神鑑定と周囲の反応

将吾の告白は、衝撃的だった。

彼の犯行は、単なる妄想だけでなく、「ナイトロード」という謎の人物による巧妙な洗脳と心理操作によって引き起こされたものだった。

警察は将吾の精神鑑定を速やかに手配した。

彼の供述は、支離滅裂な部分が多いものの、警察は「ナイトロード」というキーワードを重視し、新たな捜査の糸口として捉え始めた。


ホテルに滞在する生徒たちの間には、将吾の逮捕と、彼の告白の内容が瞬く間に広まった。

「将吾くんが、遥ちゃんを殺したなんて…」「でも、ドラキュラに取り憑かれたって…」「誰かに操られてたってこと?」様々な声が飛び交い、恐怖と困惑、そして理解できないものへの不信感が渦巻いていた。


特に、遥の友人たちは、将吾の告白に大きな衝撃を受けていた。

彼らは、遥を失った悲しみと、将吾への怒りの間で揺れ動いていた。


「将吾が、あんなことするなんて…信じられない」


「でも、あんなに不気味なこと言ってたし…」


クラスメイトたちは、将吾の異常な言動を思い出し、その裏に隠されていた真実の恐ろしさに戦慄していた。

彼の孤独な過去や、「ナイトロード」による洗脳の事実を知っても、その行為の重さは変わらない。

彼らは、将吾を「被害者」として捉えるべきか、「加害者」として断罪すべきか、戸惑いを隠せないようだった。


担任の先生も、将吾の告白に深く心を痛めていた。


「佐々木くんは、これまでも少し変わった子だったが、まさかここまで追い詰められていたとは…私たちの気づけないところで、彼を蝕む闇があったのですね」


先生は、将吾の異変に気づけなかった自らを責めるように呟いた。

今回の修学旅行での悲劇は、生徒たちの心に深い傷跡を残しただけでなく、大人たちにも大きな教訓を与えていた。


私は、将吾のSNSアカウントを改めて見返していた。

彼の過去の投稿、特に「ナイトロード」とのやり取り。

そこには、将吾が次第に精神的に追い詰められ、現実と妄想の区別がつかなくなっていく過程が克明に記されていた。

ナイトロードは、将吾の心の弱さにつけ込み、彼の「ドラキュラの末裔」という妄想を現実であるかのように吹き込み、彼を支配していったのだ。


その時、イアナが私の隣に座った。彼女は、静かに将吾の投稿を見つめていた。


「ルーマニアの伝承では、心に闇を抱えた者は、悪しき霊に魅入られると言われています。しかし、それは、私たち人間の弱さにつけ込む、見えない存在です。ナイトロードは、まさにその『見えない存在』を装い、将吾さんの心を蝕んでいったのでしょう」


イアナの言葉は、将吾の狂気を、ルーマニアの古い伝承と結びつけ、その深淵を解き明かしてくれるようだった。

将吾は、本当に「ドラキュラに取り憑かれた」と信じていたが、その正体は、人間の悪意と、心理操作によって作られた幻だったのだ。


警察の捜査は、「ナイトロード」という謎の人物の正体を探るべく、新たな局面を迎えていた。将吾のSNS履歴から、彼が使用していたオンラインフォーラムや、その「ナイトロード」との具体的なやり取りの記録を辿り始める。

私たちは、将吾の背後に潜む真の黒幕を突き止め、この悲劇に終止符を打つことを誓った。

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