第27話 事件の告白
将吾が「ナイトロード」という言葉に示した明確な動揺は、私の確信を裏付けた。
彼は誰かに操られていた。
しかし、その「ナイトロード」が誰なのか、そしてなぜ将吾をここまで追い詰めたのかは、まだ謎のままだった。
私たちは、将吾の精神状態がこれ以上悪化する前に、真実を聞き出す必要があった。
警察は将吾の精神鑑定を検討し始めていたが、私たちは再度面会を懇願した。
今回は、イアナも同席を許された。
彼女のルーマニアの伝承に関する知識が、将吾の歪んだ心の糸を解きほぐす手助けになるかもしれないと考えたからだ。
再び向かい合った健太は、前回よりもさらに憔悴しきっていた。
彼の視線は宙をさまよい、まるで現実世界にいないかのようだった。
「健太くん、私たちには分かってる。あなたは遥さんを殺した。でも、それはあなたの意志だけじゃないんでしょ?誰かに、そうさせられたんじゃないの?」
私が問いかけると、健太はゆっくりと、しかしはっきりと口を開いた。
「…私は…彼女を…殺しました」
その告白に、面会室の空気が重くなった。
しかし、それは私たちがすでに知っていた事実だ。問題は、その背景にある真実だった。
「どうして?なぜ、遥さんを殺したの?」
拓海が尋ねた。健太の瞳に、再び狂気めいた光が宿る。
「ドラキュラ伯爵の…命令でした。彼女は…私の邪魔をしていた。私の…力を阻む者だった…」
健太の言葉は、相変わらず「ドラキュラ」に縛られていた。
しかし、イアナは、そんな健太の言葉に、静かに耳を傾けていた。
「健太さん…『ドラキュラ伯爵の命令』とは、本当に、あなた自身の心から生まれたものですか?それとも、誰かの声が、そう聞こえただけなのでは?」
イアナの問いかけに、健太の表情が初めて明確な変化を見せた。
虚ろだった瞳に、激しい葛藤の光が宿る。
「声…?それは…ナイトロード…」
健太の口から、再び「ナイトロード」の名前が出た。
その響きに、彼の体が微かに震える。
「ナイトロードが…私に力を与えると…約束した。真のドラキュラ伯裔となるための…**『血の儀式』**が必要だと…」
健太は、自らの内に秘めていた真実を、まるで悪夢から解放されるかのように語り始めた。
「遥が…私の妄想を…笑った。嘲笑した。それは…私の**『血筋』**を冒涜する行為だった。ナイトロードは…言った。『その侮辱は、血でしか償えない』と…」
健太は、遥が彼を嘲笑したこと、それが彼の「ドラキュラの末裔」としてのアイデンティティを深く傷つけたことを語った。
そして、「ナイトロード」が、その傷を癒す唯一の方法として、「血の儀式」を唆したのだという。
「ペンダントも…ナイトロードの命令で、奪ったのです。魂の断片として…そして…」
健太は、古書のブックマークが変形する凶器についても語った。
それは、ナイトロードが健太に与えた「血の儀式」のための「古の道具」であると信じ込まされていたのだ。
彼が、その道具を使って遥の首筋に傷をつけたのは、まさしく「呪いの紋章」を刻むためだった。
「ナイトロードは、常に私のSNSを監視していた。私が彼に逆らおうとすると…私の弱みにつけ込み、私を脅した…」
健太の告白は、彼の犯行が、単なる孤独な妄想によるものではなく、「ナイトロード」という人物による巧妙な洗脳と心理操作によって引き起こされたものであることを明確に示していた。
彼は、まさに「ドラキュラに取り憑かれた」かのように振る舞わされていたのだ。
面会室に、重い沈黙が流れた。健太の告白は、事件の全貌を明らかにした。
しかし、その背後に潜む「ナイトロード」の存在は、依然として闇に包まれていた。私たちは、真の黒幕を突き止めるため、次なる行動を起こすことを決意した。
この悲劇の連鎖を、ここで終わらせなければならない。
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