【貧血なら鉄摂れ】という無知で極度安直な言葉不足

加賀倉 創作【FÅ¢(¡<i)TΛ§】

血。の誤認

 表題に関しまして、「『鉄』の必要性を謳うこと」は、決して誤りではありませんが、その論の一辺倒的いっぺんとう流布を卑近ひきんに例えるならば、「家を建てるのに『釘』しか調達しない」とでも言えましょう。つまりは必須要素は無数に存在するのに、過度断片的知識の一つで賢くなった気になり、視野狭窄しやきょうさくに陥り、実は本質をほとんど見抜けていないのです(もしくは鉄以外の必要を気にかけつつも『面倒臭い』や『意思薄弱』で、調べないし実践しないです)。


 まず、謬見びゅうけんを正す目的で、極度な簡易的集約ワードを生成するなら、血液は『タンパク質』ジュースと見做みなすのが妥当でしょう。


 なぜなら、血液の構成要素は、あまりに多種多様多数のタンパク質を内包しているのです。


 血液は、血漿けっしょうと血球でできています。

 血漿にはアルブミン、グロブリン、血液凝固因子などのタンパク質。

 赤血球には呼吸色素ヘモグロビンというタンパク質(ヘム『鉄』はここにきます)。

 白血球≒免疫細胞である、マクロファージやNK細胞T細胞やB細胞の主原料はタンパク質。B細胞が作る抗体もタンパク質。


 では、ただタンパク質っぽいものを無闇矢鱈むやみやたらに摂ればいいかというと、そうではありません。


 タンパク質にも様々にありますので、場合に応じて意味ある形にする必要があります。


 そこで、ビタミンB群。


 大前提として、タンパク質の吸収にはビタミンB群の一種、ビタミンB6が必要です。


 とりわけ赤血球(それが持つ呼吸色素ヘモグロビンに鉄が含まれていますね)の生成・成熟には、ビタミンB12、葉酸ようさん(これもビタミンB群扱い)などによる促進作用的加勢が必須です。


 ここで一時、視点をマクロに俯瞰すると、そもそもビタミンB群は『代謝のビタミン』と呼ばれるほど代謝において極めて重要であり、それらが不足なく全て揃うことで代謝——エネルギーやその他不可欠物質の分解合成サイクル——が高まります。つまり、血液云々うんぬんの前に、人體という巨大工場の稼働効率・作業環境改善も当然なされるべきであり、ビタミンB群はそこに大きな力を注ぎます。


 比喩的にまとめると、タンパク質群が材木や鉄骨なら、ビタミン群が作業員や生産施設とでも言えましょうか。


 また、血液の材料的な話で言えば、亜鉛も極めて重要です。


 人中の亜鉛のうちおよそ、


 八割が、赤血球の中に、

 二割が、血清——血漿からフィブリノゲン(止血タンパク質フィブリンの前駆物質)を取り除いたもの——の中に、

 残りが、その他血中の有形成分——白血球や血小板の中に、そして全身に、


 と言われています。


 なら、血液は『タンパク質&亜鉛ジュース』とも言えそうな気がしてきますよね。


 話はちょいと逸れますが、亜鉛は免疫の根源ですので、何かと免疫機能を壊がちな現代日本人にとって、亜鉛の意識的摂取はほとんど100%、健康に繋がります。


 ここで光学顕微鏡の倍率を上げて、血液の中の赤血球……電子顕微鏡やX線回折かいせつ法&高精度結晶化を使わねば可視化できないレベルへ分解能を上げ……赤血球の中のヘモグロビンというタンパク質分子構造の中のヘム(古代ギリシア語:鉄)のポルフィリン構造の核たる『鉄』、とミクロ的に見るならば、当然、ビタミンCによる『鉄』吸収促進、なども必要でしょう。


 ここまでは、血液を、『誰』が、『何』を使って作るのか、という話(『なぜ』は言わずもがな、生きるため、自明ですね。『いつ』も生きる限りはほとんど常に、でしょう)。


 となると、『どこで』と『どのように』は?


 現代西洋医学においてはしばしば、そしてあたかも、造血≒赤血球産生は赤色骨髄(頭蓋骨、胸骨、肋骨、椎骨などのからだの中枢的箇所の骨、また仙骨、各種関節付近の骨の骨髄に多い)のみでしか行われない、と説明されます。


 ですが、そんなはずはないでしょう。骨はあんなにガチガチで閉鎖的かつ非流動的です。また髄は狭小きょうしょうです。


 血液は、赤血球は小腸内でも産生されます(ここでは控えめにそのように表現しておきます)。


 小腸はかなめ、なんて言われます。が、本当にその程度でしょうか。私の感覚的には、小腸は脳と肝臓の働きのハイブリッド的働きをする臓器です。

 小腸に届いたドロドロの食物を、絨毛じゅうもうを使って小腸細胞が取り込む。

 取り込んだタンパク質や亜鉛や鉄を利用、ビタミン加勢を受けつつ、赤血球を作ります。赤血球が幹細胞(とあるノーブルな山の中を筆頭に、幹細胞ビジネスには詐欺的なものがありますね)的に働き、その他の細胞、組織、器官へと分化します。

 腸内で必須酸たるトリプトファンからセロトニンが作られたり、各種ペプチドホルモン——酸が連なってできたタンパク質ホルモン——が作られることからも、タンパク質ジュースたる血液が小腸内で作られても、不自然ではありませんよね。(※タンパク質を細かく刻めばアミノ酸。アミノ酸を組み合わせればタンパク質です)




 🩸🩸🩸




 鉄という部分的材料だけがあっても、體は『ただの倉庫』になるだけ。倉庫には、タンパク質や亜鉛や各種ビタミンも必要です。また、余談ではありますが、鉄以外のミネラル——ナトリウム・カリウム・カルシウム・マグネシウム——の血中濃度も当然重要です。もちろん日光——皮膚コレステロール変換ビタミンD免疫調整トリガー——も。


 つまりは血液の問題には、包括的なアプローチが必須であり、「これこれだけやっとけばOK」はありえません。

 

 広く深く調べて、知って、実践して、実感して、学ばねば、根本的健康上問題の解決は望めません。


 人體は、一本草ではありません。森です。


 森羅万象すなわち宇宙(SF的宇宙空間ではなく、『この世』的な意味合い)です。

 

 小手先の知では、宇宙を相手にはできません。


 ところで、何も私は、ここに示したことが全てである、などとは思っていません。他にも『造血』に必要な要素はあると思います。なので補足ももちろんお待ちしております。また、誤りや捉え違いがあるならば止揚しよう的議論が必要です。ここは『マウント取り』の場ではありません。私はいつも、私自身を含む私にとって大切な人々の、健康と幸福を切に願っております。

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【貧血なら鉄摂れ】という無知で極度安直な言葉不足 加賀倉 創作【FÅ¢(¡<i)TΛ§】 @sousakukagakura

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