第4話 風に揺れる白い花。名もない記憶の奥で今も優しく咲いている

数日後、夢に出てくる

草原の景色と似た場所を見つけた。



湖のほとり、風が優しく吹く、静かな場所。




そこに白いカスミソウが

まるで誰かの手で植えられたように咲いていた。




私はそっと花に手を伸ばし、語りかけた。



「あなたは・・・・・・誰?」



すると、風の中で声が聞こえた気がした。



“名前なんてもういいよ。思い出さなくていい。

君が笑って生きてくれるなら、それだけで。”




私は花をそっと抱きしめた。

夢の声と、手紙の言葉と、心の震えが一つになる。

忘れていたのはきっと、彼のこと。

そして、彼の優しさも、あたたかさも。

私は、大切な人を、心ごと失っていたのだ。



でも、彼はカスミソウを残してくれた。

想いを私の手の中に。




今も記憶が全て戻ったわけではない。

けれど、花の香りを感じるたび、

カスミソウを見つけるたびに

心が震える。

あの人はもう居ないけど、

私の中には確かに残っているから。

それだけで、生きていける気がする。

笑っていける気がする。




“ありがとう”

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キミに咲いてほしい【完】 月夜。 @runa_28

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