縁起物

梨々ヱ

ゲコゲコゲコ



最近雨ばっかりだなあ…まだ梅雨入りの話題は見てないけど。

昼間なのに空は暗く、心做しか気持ちも暗くなる。


ゲコゲコゲコゲコゲコゲコ


田舎で田んぼ道も多いこの道はカエルがうるさいぐらいに鳴いている。

やつらにとっては恵みの雨なのだろうか。


今日は仕事でミスをしてしまい上司に怒られ落ち込みつつも少し苛立ちを感じていた。

なんてことないその日に取り繕えるミスだ、あんなに怒る必要あるだろうか?

そんな日にこの雨だなんて余計にイライラしてしまう。

なので歩き方にも苛立ちが出てしまったのだろう、グチャッと何かを踏み潰した感触がした。


「うわっ…なんだよ…」


恐る恐る足を退かすと1匹の潰れたカエルが見えた。


「最悪だな本当に今日は…」


苛立っていた俺は申し訳ないという気持ちよりもカエルを踏み潰した気持ち悪さにうんざりしていた。


ゲコゲコゲコゲコゲコゲコ


相変わらず忙しなくカエルが鳴いている。


「もう早く帰って寝よう…」


最悪な気分で帰路を辿っていた。


ゲコゲコゲコゲコゲコゲコ


ああうるさい。


ゲコゲコゲコゲコゲコゲコ


本当にうるさいな。

というかさっきよりうるさくなってないか?


ゲコゲコゲコゲコゲコゲコ

ゲッゲッケッゲッゲッゲッ


なんだか俺を取り囲んで鳴いているように感じる。

少し気味が悪くなったので足早に家を目指した。


ゲコゲコゲコゲコゲコゲコゲコゲコゲコゲコ

ゲッゲッケッゲッゲッゲゲッゲッケッゲッゲッ


どんどん鳴き声が大きくなっていく。

ああもう気持ち悪いやめてくれ!


ここは毎日通ってる道だ、車通りもそこまで多くない。毎日なにも無く無事に帰っている。そう思ってろくに確認もせずに道を曲がった。


パァーーーーーッ!

クラクションの音が聞こえた。


「あっ、」


カエルの声に気を取られていたのと傘で隠れてよく見えていなかったが大型トラックが正面にいた。



ドンッ グチャッ キキーーーーッ


「おい!兄ちゃん!大丈ぶ…ウワッ…」


そこにはグチャグチャに潰された人間がいた。

先程のカエルと同じように。


ゲコゲコゲコゲコゲコゲコゲコゲコ

ゲッゲッケッゲッゲッゲゲッゲゲッゲ


雨の降る音と嬉しそうなカエルの鳴き声が響いていた。


---------------------


「カエル」

古くから縁起物として親しまれており、幸運をもたらすといわれている。

また、語呂合わせから無事に帰るという意味合いも持つ。

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縁起物 梨々ヱ @rinrin_ee

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