〇〇の“妹”じゃない、“わたし”になるまで

 この物語は、思春期の揺れる心や人との距離感を、静かな言葉で丁寧に描いていて、とても共感しながら読むことができました。

 主人公・紗月が抱える家族や友人、恋愛との複雑な距離の取り方、そして「自分は誰なのか」と模索しながら一歩ずつ成長していく姿が、とてもリアルに伝わってきます。明るくて頼もしい親友・瑛美里や、まっすぐで少し不器用な兄・晴月との関係も、温かさと切なさが同居していて、どこか懐かしい気持ちになります。友情も恋愛も家族も、すべてがまっすぐにはいかないからこそ、紗月が涙を流し、悩みながらも前を向いていこうとする姿に勇気づけられる作品です。

 家族や恋愛のことでモヤモヤしたことがある人には、この作品はきっと響くはず。静かだけど、心に残る青春ストーリーを読みたい人に、ぜひおすすめしたいです。

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