『せんじょうの天使』

かごのぼっち

せんじょうの天使

斬りつける雨に裂かれて皮膚ただれ 流れるあかい川をみつめる


澱に沈み底に溜まった汚泥に染まる 重む体に降り立つ天使


翼もないヘイローもない服もない カラシニコフと煙草がくゆ


吸い殻を胸に押し当てジジと鳴る 苦痛に歪む瞳を嗤う


壁に背を張り付けられて至近距離 喉もと伝う血と汗と唾


愛撫するトカレフ喉に捩じ込まれ 引きずり出して噛みしだく舌


血みどろに躰を濡らし声漏らし 淫らに乱す天使の輪舞曲ロンド


G線上主旋律が崩壊し 天使の声が別れを告げる


抱きしめてフワリと羽が舞い乱れ 朱く染まった羽毛に独り


トカレフとカラシニコフと煙草だけ 天使の羽に血飛沫ちしぶきが舞う







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『せんじょうの天使』 かごのぼっち @dark-unknown

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