武Geisha☆新免武蔵☆剣撃無双演義

akiyasu

第1話 武芸試合

 戦国の乱世。自らの武芸の研鑽を重ね、その業を極めようとする者たちがいた。人々は彼らを武芸者と呼ぶ。


 俺の父である新免無二斎は、一昔前に京で、名門・吉岡道場の当主との試合に勝利して、


「日ノ本無双兵法術者」


 という称号を、足利将軍より賜ったらしい。その無二斎の一人息子として生まれた俺は、幼い頃から武芸を叩き込まれて育った。


 そして、俺が十三歳の頃、


「大変よ、有馬喜兵衛と名乗る武芸者が現れ、村外れに高札を立てたの!」


 と、近所に住む杏奈が駆け込んできた。


 高札を立てたのなら、おそらく、その有馬は父に挑戦するために来たのだろう。


「でも、今、親父は村を留守にしているんだよ」


 と、仕方がなく、俺は杏奈に案内されて有馬の所へと出向いた。


 そして村外れには、熊のような大男がいて、


「何だ、小僧?」


 と、俺を睨みつけて言う。その迫力に杏奈は怯えたのか、


「きゃ、怖い」


 と、小声を漏らした。


「大丈夫だよ、杏奈」

「でも怒ってるわよ」


 そんな俺たち向かって、有馬は巨体を一歩、二歩と近づけながら、


「おいガキども、何をゴチャゴチャ言っているんだ。オレは見せ物じゃねぇんだぞ!」


 などと、威圧的に大声を発する。俺は、その迫力に気圧されながらも、有馬の正面に立って名乗った。


「新免無二斎の息子、武蔵と申します」

「お父上の無二斎殿は、どこにいる?」

「あいにく、父は留守にしていまして」

「居留守か、臆病風に吹かれたのだな」


 そう嘲笑う有馬を見ていると、俺は何だか腹が立ってきて、こう言ってしまう。


「まずは、息子の俺が相手をします」

「冗談はよせよ、刀も持たずに何だ」


 有馬は鼻息荒く、俺の襟首を掴んだが、


「弍天壱流・光陣心空投げ」


 俺は反射的に、最近、練習していた技で有馬を投げる。


 ドスン。


 地面に叩きつけられた有馬は、怒りの形相で立ち上がり、


「殺されたいのか、クソガキが!」


 と、腰の刀を抜いた。ギラリと刃が光る。


「武蔵、逃げて!」


 杏奈が、後ろで叫んだ。だが、俺は無手のまま両手を構える。


「有馬殿、お相手願えますか」

「素手で、どうするつもりだ」


 有馬は殺気に満ちた目で俺を睨みつけ、


「おりゃあーっ、死ね!」


 大上段から、斬りかかってきた。


 その瞬間、俺は、巨漢の有馬の懐深くに突っ込み、振り下ろされる刀より速く、


「光撃秘翔拳!」


 必殺の拳打を打ち上げる。


 バッチゴオォーン!


 けたたましい打撃音が響いた。


 俺の右拳は有馬の顎を打ち抜き、直後、地面に崩れ落ちて、気を失う有馬。


「む、武蔵、殺しちゃったの?」


 と、杏奈が恐る恐る、覗き込む。


「いや、たぶん死んではないと、思うけど」


 俺は倒れた有馬を見下ろして、その呼吸を確認した。

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