株式会社出られない部屋
おいしいお肉
出られない部屋職人の朝は早い
株式会社出られない部屋(仮)
諸君は、そのような会社の存在を知っているだろうか。名前すら、おそらくは聞いたことがないのではないのだろうか。我々は、社会の表舞台には立たない。さながら忍者のように影に潜み、日常に紛れ、人知れず暗躍する組織である。
出られない部屋職人の朝は早い。
まず、閉じ込められる任意の人物たちのパーソナルデータの把握から始まる。資料を読み込み、彼らの筋力や破壊力、弱点などを隅々まで把握する。出られない部屋を武力で壊して突破しようとする輩は後を絶たない。まったく、嘆かわしいことである。そんな彼らにさまざまな制約を課し、条件を達成させるべく職人たちは奔走する。どんなものでも砕けぬ頑丈な部屋を、壁を、床を、壊しても壊しても再生する無限の部屋を。
閉じ込められた任意の人物たちの「どうにか条件を達成せず、脱出できないか」というあまねく望みをへしおり、砕き、希望などないことを実感させる。ただ、ここも会社である。そう、つまるところコストと、納期と、人員と、なんやかんや現実的に地に足のついたエトセトラがある。
つまり、例えば比較的すんなり条件を達成するような人物たちの部屋を無駄に頑丈にして仕舞えばコストが無駄だし、逆に不屈の意志を持つ人物たちの部屋をよわよわざこざこにしてしまい、うっかり突破されて仕舞えば【出られない部屋】は出られない部屋ではなくなる。名前負けもいいところである。
そう、出られない部屋というブランドは、『条件を達成しないと出られない堅牢な檻』ではなく、ただ単に個人がめちゃくちゃ下準備をして、はちゃめちゃに頑張った結果の産物なのだ。諸君らはそのことをよく胸に刻み、これからも畏敬と感謝を持ち、今一度よおく考えてそのギミックを使用して欲しい。
株式会社出られない部屋 おいしいお肉 @oishii-29
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。株式会社出られない部屋の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます