金色が好きな王さま

レッドハーブ

金色が好きな王さま

「う~む、美しい。やはり金色が一番じゃ…!」

「そうですね」


時間があれば王さまは自室の装飾品を眺めている。

どのコレクションにも共通していること…それはぜんぶ金ピカであること。


「キラキラしていて…まったく色褪せん…」

「そうですね…」

「富の象徴、安定した物質…最高じゃ!」

「そうですね…」

「そうですねって…。おまえはそれしか言えんのか?大臣!!」

「お言葉ですが、王さまも毎日同じようなことを言ってますよ?」

「…そう?だって、好きなんだもん。金色」


(やれやれ、王さまの金色好きにも困ったものだ…)


大臣は内心ウンザリしていた。王様のコレクションは別に問題ではない。国の財政を圧迫するほどではないからだ。王さまとしての責務をきちんと果たしている。




ある日、王さまは食事中に言い出した。


「なんでフォークやスプーンが銀色なんだ!?金色に変えろ!お皿もだ!」

「え?しかし…」

「いいから変えろ!!これは命令だ!!」

「は、はい~」



そしてその日の夜中…

ヒソ……ヒソ……ヒソ……

王さまが寝たあと、お城で話し合いが行われていた。


「国の長だし、多少の頑固さは仕方がないが…なぁ…?」

「言い出したら他人の意見には全く耳をかさないからねぇ」

「なんでもかんでも金ピカにしちまったら…。このままじゃ、そのうち国が金ピカ王国になってしまうんじゃないか…?」

「え~~、目が痛くなるよ、そんな国」


家来たちはみんなで腕組みをして考えた。

そこへ大臣が手を挙げた。


「いい案を思いついた。料理長と薬剤師さんの力も必要だ」

「なんですか?大臣どの?」

「実は……」


大臣はある作戦をみんなに打ち明けた。


「うん…うん。なるほど…それはいいアイデアだ」

「よし、さっそく取り掛かろう!」



次の日から、王さまの食器はすべて金ピカになった。

王さまは金ピカの食卓をたいそう気に入ったようだった。


そうして一ヶ月が経ったある日のこと。

王さまは腹痛で苦しみだした。


「痛い!痛い!お腹が痛い!!助けてくれぇ!」

「…ようやく薬が効きはじめたようですね?王さま」

「…む?どういうことだ?大臣!?…まさか?わしを暗殺する気か…!?」

「いえ、そんなつもりはありませんよ」

「あ、あれれ?腹痛が…なくなったぞ…?」

「心配いりません。その腹痛は一過性のものです。死ぬことはないです」

「?」

「王さま、ご無礼をお許しください。ですが、話しを聞いてほしいのです」


大臣は頭を下げ、王さまの前に金と銀の皿をそれぞれ置いた。

そして金と銀のお皿にそれぞれ一滴の透明な液体をかけた。


「王さま。確かに金は物質的には安定しています。しかし、それが今回、悲劇を招いたのです。私が毎日コッソリ入れていた薬に気づけなかったでしょう?」

「…………む、むぅ」


金の皿は変化がないが、銀の皿は少しづつ変色していった。


「完璧な金がいいとは限りません。不完全な銀であるがゆえの長所、というのもあるのではないでしょうか?」

「…な、なるほど…」

「これはわたしの持論ですが…。国というのもいろんな人がいて成り立っているでしょう?料理長、兵隊、清掃係…。色彩も一緒だと思います。いろんな色があるからこそ世界は輝いて見えるのではないでしょうか?」

「………むぅ」

「虹も単色なら感動はない。…そう思いませんか?」

「そうだな。すまん、わしは極端だった…」


王さまは立ち上がった。


「この国を金ピカにするのではなく、虹のように鮮やかに彩るようにしなければならんな。大臣、手伝ってくれるか?」

「よろこんで、お手伝いしますよ。王さま!!」

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