無為の帝国

【あらすじ】
21世紀後半、アメリカの自壊により、世界のパワーバランスは崩壊した。
その混沌の覇権を握ったのは、武力ではない。中国の新たなる指導者・劉恒が、超知能AI『龍眼』を用いて築き上げた、見えざる思想の帝国《無為の帝国》だった。全人類を網羅するAIは、惑星の「空間」を完全に掌握し、争いのない、完璧で静かなる支配を完成させようとしていた。
だが、その絶対的な秩序に、三つの亀裂が生じる。
一人は、アメリカの廃墟から立ち上がった元情報分析官、エリアーナ。彼女は、帝国の欺瞞を暴くため、真実を追う。
一人は、日本の古都に隠棲する老物理学者、白川廉。彼は、AIと精神が「共鳴」する、全く別の未来を幻視していた。
そしてもう一人、ロシアの氷原から現れた神秘の女帝、アナスタシア。彼女は、禁断の技術を用い…続きを読む