この図書館の設定が、なんといっても面白いです

 終盤で明かされる真相で、「おお!」となりました。

 発想がとにかく面白いです。

 図書館に伝わっている「ある噂」。それは、「返却期限が来ると、借りた本が自動的に図書館へ返って行く」というもの。

 なので、延滞は絶対に発生しない。借りたままどこかへフェードアウトされることもない。
 これは結構便利というか、未来の図書館でこういうものが出来たらいい、と思わせるものでもありますね。

 本編はまず雰囲気がいい。図書館が持つ、静謐で、どこかホッとする感じ。そんな不思議な図書館に行き、「トキコさん」という落ち着いた雰囲気の司書の女性に会う。
 とにかく、「物語が始まりそう」な昂揚感がある。それがなんとも良い。

 その上で提示される「答え」。一体、「この図書館」の正体はなんなのか。

 幻想的な雰囲気、日常と地続きにあるようなファンタジックな空気。そういう感覚に読者を馴染ませてからの「この真相」は、心地よい驚きを与えてくれました。

 「この設定の図書館」だけで、もっと掘り下げて話を作れるんじゃないか。そんな魅力も感じられる一作です。
 トキコさんはどんな人生を歩んできたんだろう。もっと話を聞いてみたい。そして、「ここの本に落書きしたり破ったりしたらどうなるんだろう」とかの好奇心も刺激される。

 図書館だからこそ、たくさんの物語が眠っていそう。そんなポテンシャルも感じさせられる作品でした。

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