「チケットをなくしただけ」という日常的な失敗から、いつの間にか戻れない場所へ迷い込んでいくその移行があまりにも滑らかで、気づいた頃にはもう手遅れになっている。レビューで繰り返し言及される「イグアナのまばたき」という一語が、この作品の不気味さの正体だと思う。
悪意のあるモンスターも脅迫もなく、ただ友達は呑気で優しいまま、遊園地は楽しいままなのに、何かが決定的に狂っているその「悪意のない恐怖」という質感が、1,833文字という短さの中で見事に保たれている。説明を拒んだまま不条理だけを置いていく構成が、童話的な不気味さを生んでいる。
最後の一文を読んでもう一度タイトルに戻りたくなる、静かな後味の悪さが秀逸な一作。