命落つ憎悪

メランコリック

命落つ憎悪

打ち捨てられた安酒の缶の底に芽生えた命

何処から来たのでしょう


波濤に殴られていた最中に紛れた卵から?

それとも自棄っぱちの自殺志願者がくだまいて吐き捨てた唾から?

夜空を駆ける星の舐め跡から?

はたまたコウノトリの滑空と澱んだ空気が結びついたものから?

桜色の便箋の赤黒き死灰から?

それらを数式に纏めた世界の機構から?


命の感情も何処から来て何処に在るのでしょう


缶の鋭利な歪みとペイントの剥がれに?

債務者の小銭と日々の比重に?

縊首と飛び降りの折り合いの悪さに?

疑問符の連続に?

過剰摂取と打ち捨てをさせる指の動悸の大元に?

生まれ落ちたどん底に溜まった泥水の最下層に?


命は行き着けないでしょう


家にも

人にも

海にも

虚にも

現にも

名にも


七海血で満たされど鼓動早まり続ける命でしょう


自らの血で心臓満ち満ちるまで

朝日うらぶれるまで

墓石腐食するまで

誰そ彼と彼は誰が顔合わせるまで

。まで

 まで

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命落つ憎悪 メランコリック @suicide232

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