第2話 残響と虚影

ロム(null隊隊長)

「……各員、装備確認。AREA1《レヴァアス・シティ》」は過去最悪のネザービースト濃度だ。気を抜くな。


レイ(主人公)

「問題ない。」


ミラ(Sランクnull隊)

「異常なし。」


セラ(Sランク。null隊)

「準備万端。いつでも行けるわ。」


クロウ(Sランク。null隊)

「俺の獲物…残しておけよ。」


ロム

「今回の任務は【AREA1のオルタ・コアの回収】そこに未知反応を検知した。正体不明。撃破or回収が目的だ。転移座標、エリア外郭ブロックD-17。各員、N-CODEを起動しろ。」


【解説】 《N-CODE》:巡礼者の命綱。心拍数、異能値、体内異物反応、Nullvector反応を計測し、転移・戦闘支援・部隊間通信を担う。


4人がデバイスを起動。各デバイスが微弱な光を放ち、ゲートコアにリンク。


そしてnull隊はゲートの中へと入っていく。


かつて煌びやかな未来都市だったその場所は、原因不明の大洪水と異常現象により都市ごと水没。今は「ネザービースト」と呼ばれる異形の存在が徘徊し、人の手が届かぬ禁忌領域となっていた。


【解説】 AREAとは滅びた世界の危険地帯を区画した領域名。それぞれ異なる異常現象が発生し、未知の存在が棲みついている。


【N-CODE起動:AREA1水没都市 潜入任務】


ミッションコード:A1-005


目的:エネルギー反応源の調査と回収


警戒対象:不明体ネザービースト、暴走機械群


セラ

「今回の目的は、水没都市内の**“オルタ・コア”**と呼ばれるエネルギー源の回収。これが各AREAの異常を引き起こしてる元凶のひとつだって話。」


クロウ

「それと、ネザービーストが発生してるって情報もある。会ったら即処理。生きて帰りたいならな。」


ロム

「今回もランク外の連中が動いてる可能性が高い。警戒を怠るな。」


荒廃し水没した都市の景色が広がっていた。


巨大なビルの半分が沈み、水面に浮かぶ街灯の残骸、無人のボート。不気味な静けさの中、遠くで何かのうめき声のような音が響いていた。


ミラ「……気味悪いわね。」


クロウ「ここがAREA1、《水没都市》。伝承じゃ“都市消滅の始まり”って呼ばれてる場所だ。」


レイ(※心の声)

(やっぱり、ここの空気……知ってる。この感覚、前に……)


ロム「作戦行動開始。オルタ・コアの反応源はこの先、座標X-26Y-48。各自、警戒しながら進行するぞ。」


全員が静かにうなずき、それぞれ武器を構えながら水没都市の奥へと足を踏み入れる。


荒廃した水没都市の路地裏。建物の骨組みだけが残り、天井から水滴が落ちる音が不気味に響いていた。


クロウ「……足音、消せ。」


セラ「……何かいるわね。」


突然、ロムのN-CODEが警告音を発する。


【警告:不明エネルギー反応、距離30m接近中】


ロム「構えろ。」


水たまりの向こう、暗闇から現れたのは異様な姿だった。


体長2.5mの獣型異形──漆黒の骨と腐食した肉体を持つ《ネザービースト》


『ネザービースト──異界由来の怪異兵器。AREA内でのみ発生し、異能者を捕食しエネルギーを奪う危険存在。通常兵器は効果が薄く、異能能力か特殊武装での撃破が推奨される。』


ミラ「きっしょ……!」


クロウ「来るぞ!」


ビーストが飛びかかる。瞬間、セラの右手が青白く発光。


セラ「“ブルーフレイム・カッター”!」


青い炎の刃が空を裂き、ビーストの右腕を切り落とす。


ビーストは叫び声もなくなお突進。


ロム「“ハウリングブレイカー”!」


巨大な衝撃波を生む拳撃が直撃し、コンクリの壁ごと吹き飛ばす。


クロウ「トドメだ、レイ!」


レイが静かに手を前に出し、指先に紫色の光が集まる。


レイ「“ヴァイオレット・ストリング”」


目に見えぬ紫の糸がネザービーストを縛り、そのまま断裂。


断末魔も上げず、異形の獣は崩れ落ちた。


ミラ「全員無事ね。さすが、うちのNull隊。」


クロウ「ったく、初手でこれかよ。先が思いやられるぜ。」


ロム「……気を抜くな。今のはまだ“雑魚”だ。」


奥の暗闇、ビルの影からこちらを伺う異様な人影が映る。


それは、顔の半分を仮面で隠した異能者のような男。


???「ふふ……ようやく来たか。Null隊……」


気配が消える。


セラ「今、誰かいた?」


ロム「……気のせいじゃねぇ。進むぞ。目的地はまだ先だ。」


隊は警戒を強めながら再び進行を開始する。


薄暗い廃ビルの内部。天井から水が滴り、床には瓦礫と苔が広がっている。かつて街だった面影は、今や歪んだ異形の巣窟だ。


ロムたちNull隊の5人が慎重に進行。


ロム「反応はこの先だ。各員、配置に就け」


手首のN-CODEに手をかざし、戦闘データを確認する。


クロウ「ふっ、久々の大型か。腕が鳴るぜ」


ミラ「位置に就く。狙撃支援開始」


セラ「了解。高所より敵を捉える」


レイ「…………」


(レイは静かにうなずき、ビルの梁へと跳び移る)


奥の影が歪み、ネザービースト・タイプDが咆哮と共に現れる。

無数の触手と腐敗した巨体、背中には金属片が突き刺さり、目は虚ろに光を放つ。


ロム「来たぞ、ランクDタイプ。手分けする。ミラ、セラは上から支援、クロウは正面右を押さえろ。レイ、お前は…自由に」


クロウ「言われなくても!」


(拳の装甲を展開し、ビーストに突撃)


クロウの拳が触手を受け止め、瓦礫ごとビーストを押し返す。


クロウ「この程度の力かよ!」


同時に、セラが梁から跳躍。両手の双剣型異能武器を抜き、触手を斬り払いながら走る。


セラ「足元、空けるわ!」


ミラは高所から狙撃。N-CODEでビーストの“核”をロックオン。


ミラ「ロック完了、排除する」


バレット・ネメシス弾発射。触手を撃ち抜き、隙を作る。


ロムがエネルギーブレードを展開。


ロム「一気に行く」


ビーストの腹部を切り裂きながら突進。


レイは冷静に仲間の動きを読み、ビーストの背後に跳躍。


異能**「位相斬撃」**を発動。


一閃。ビーストの背中の触手が一瞬で霧散する。


ロム(内心)「相変わらずだな…化け物め」


ビーストのコアが露出。


ロムが間合いを詰め、一撃でエネルギーブレードを突き刺す。


ロム「これで終いだ」


コアが砕け、ビーストは断末魔の咆哮と共に崩壊。


ビーストの残骸が崩れ、辺りに静寂が戻る。


クロウ「へっ、楽勝だな」


セラ「油断しないで。AREA1はまだ始まったばかりよ」


ミラ「確認。周囲に新たな反応なし」


ロム「よし、次に進む。…これがネザービーストだ。都市を蝕む異形。AREAごとに異なる奴らの巣を潰すのが俺たちの役目だ」


ふと、レイの倒したコアが紫にわずかに光る。


ロムの目がわずかに曇る。


ロム(内心)「……Nullvector反応…か」


瓦礫の散らばる広場。紫色の光を放ちながら崩れ落ちた巨大ビーストの残骸が、まだ熱を持ったまま煙を上げる。


ロム(ブレードを振って返り血を飛ばし、N-CODEを耳に当て)

「……司令部、Null隊。AREA1中枢の第1目標、排除完了。だが、通常のネザービーストの反応とは異常があった。解析を要請する」


ザザッとノイズが走り、すぐに低く響く男の声がN-CODE越しに届く。


???(通信)

「……Null隊、ご苦労だった。だが作戦はまだ終わらん。AREA1の本命はさらに奥だ」


【解説】ソミュ──正式には巡礼者第零管制室Root Cageの司令官。各隊の任務を一手に指揮する人物で、本人の詳細な経歴は機密扱い。だがその指揮能力と状況把握、時に隊員の命すら切り捨てる冷酷さで“無敗の策士”と呼ばれる存在だ。


ソミュ(通信)

「Nullvector反応が深部で検出された。至急向かえ」


ミラ(眉をひそめ)

「……Nullvector反応? まさか、 こんな場所で」


セラ(口元を歪めて)

「あー最悪。あれって、通常世界に存在しない、時空干渉型異常反応でしょ。異能持ちでも近づくだけでN-CODE狂うやつ」


【解説】Nullvector反応──それは、異世界由来の存在、もしくは次元境界を超えたモノがこの世界に干渉した際に発生する特殊波形。通常の武器・異能では干渉不能であり、発生源の存在は『ランク外』と称される脅威だ。


ロム(険しい声)

「しかも今回、Residual Code波形まで確認した。……ソミュ、説明しろ」


一拍置いて、ソミュの声が僅かに沈む。


ソミュ(通信)

「Residual Code波形──消滅した異世界兵器の残骸が放つ異能残滓だ。通常、世界崩壊クラスの戦闘の跡地にしか残らん。……つまり、このAREA1には想定外の何かが潜んでる」


クロウ

「……マジかよ。冗談にしちゃ笑えねぇな」


レイ(N-CODE越しに小さく呟く)

「Residual Code…? まさか、あの時の…」


ロムが意識を切り替え、鋭く命令を飛ばす。


ロム

「Null隊、態勢を再編成。AREA1深部ゲートに向かうぞ。N-CODEを再同期、装備は再点検しとけ。ここからが本当の地獄だ」


全員が静かに頷き、N-CODEのセーフティを解除。

画面が薄暗い広場から、歪んだ光を放つ深部ゲートへと切り替わる。


暗闇に浮かぶ歪んだ楕円形のゲート。周囲の空間は濃密な紫色の靄に包まれ、近づくだけで空気が重くなる。ゲートの中心部には、虚空に蠢く無数の異形の影がぼんやりと映し出されていた。


【解説】異界ゲート《Disbreak》──

この世界と異世界とを繋ぐ歪みの一種。常に不安定な状態で存在し、Nullvector反応の発生源となる。中に潜む存在は、この世界の法則を超越した異形のモノたちだ。


ロム(N-CODEを再起動しながら)

「各員、N-CODE最終同期確認。エネルギー残量、異能波形ともに正常」


クロウ(大剣を肩に担ぎながらニヤリ)

「この手の仕事、慣れてるだろ。ビビるなよ、セラ」


セラ(肩を竦め)

「誰がビビるか。さっさと終わらせようぜ」


ミラ(冷静に短剣を握り直し)

「ロム、今回の配置は?」


ロム

「俺とクロウが前衛、ミラは遊撃、セラは後方援護。レイ、お前はゲート裏手のResidual Code源の確保を頼む」


レイ(N-CODEを軽くタップし)

「了解。……俺にしかできねぇだろ、こういうのは」


【解説】Residual Code源

空間内に残る異能の断片を集約し、戦闘時に異界存在への干渉を行う特殊な行為。通常、接触すれば肉体・精神への大ダメージは避けられない。

Null隊の中でもこの役目を負えるのはレイのみとされている。


ロム

「行くぞ──Null隊、突入!」


全員

「了解!」


ゲートの縁に足を踏み入れた瞬間、空間が歪む。

周囲の光景は歪んだ都市の残骸へと切り替わり、水没した瓦礫のビル群の中、異様な紫色の波紋が広がる。


セラ

「うわ、ここ……完全に異界汚染されてる」


【解説】AREA1水没都市──

かつて現実世界の都市だった場所。大量のネザービーストと異界ゲートの暴走で陥没し、水没。現在は異界と接続された汚染区域と化し、人類立入禁止区域に指定されている。


ミラ(警戒しながら進み)

「反応多数。距離30……いや、20メートル!」


突然、水面を割って異形の存在が飛び出す。

骨のような外殻と無数の赤い目を持つ巨大獣**《ネザーレイジ》**が咆哮を上げた。


ロム

「来たか──各自戦闘!」


クロウ(剣を構え)

「お楽しみの時間だな!」


一瞬で距離を詰めるクロウ。斬撃とともに飛び散る紫色の体液。

ミラも影のように敵の背後を取り、喉元を一閃。セラは後方から異能弾を放ち、頭部を吹き飛ばす。


【解説】Null隊の特徴

各員Sランク以上の実力者。前衛・遊撃・援護の役割分担が明確であり、少数ながら異界作戦で無類の強さを誇る。


レイは離れたビルの屋上に立ち、N-CODEを起動。


レイ

「……Residual Code波形、確保する」


淡く光る異能の波動がレイの周囲に集まり始める。

だがその瞬間、空間の奥で異常反応。

N-CODEに警告が表示される。


N-CODE:警告──ランク外反応検出。Nullvector反応、急上昇中


ソミュ(通信)

「……Null隊、ゲート最奥にランク外存在を確認。目視確認後、撤退を推奨する」


ロム

「ふざけるな。ここまで来て帰れるかよ。全員、警戒を最大にしろ!」


遠く、巨大な影が動いた──異形の歪んだ咆哮とともに。


『AREA1「水没都市」の最奥、Residual Code波形の異常な振動。Nullvector反応も最大値を記録し、転送ゲートの維持限界まで残り20分──』


ロム(冷静に)

「全員、警戒を強化しろ。Residual Code波形が今までにない値を叩き出してる…いるぞ、何かが」


ミラ(銃のマガジンを確認しながら)

「まさか、ランク外…?」


セラ(薄く笑って)

「なら、それを潰すのが私たちNull隊の役目だろ」


クロウ(無言でナイフを抜き、背後の気配を断ち斬る)


レイ(相変わらずフードを深く被り、N-CODEのデータを確認)

「Nullvector反応、異常領域…中心座標、特定」


N-CODE内アナウンス

『Nullvector反応座標、最奥コア付近に集中。通常のネザービースト個体反応を超越した値を記録──該当存在、識別不能。ランク外の可能性』


【ガコン…】

都市の奥、崩壊しかけた教会のような建造物の奥から、膨大なResidual Codeの波が押し寄せる。


【解説】

『Residual Codeとは、かつて存在した人間や都市文明のデータ断片が異能反応により歪み、変質した残留コードのこと。これを吸収・同調することで異形の存在はさらに強化される』


【ズ…ズゥン…】


霧の中から現れる影。巨大な槍のような腕。異常な長さの首。

常識外れのサイズと異様な存在感。


ロム(低く)

「来たな──ランク外」


名前不明の存在

【■■■■■■…】


【解説】

『ランク外──正式名称不明。Elysiumクラスに迫るとされる存在。Residual Codeの核心に潜み、AREAを汚染し続ける未確認の脅威』


ミラ

「バケモノじゃん…!」


クロウ(ニヤリと笑う)

「面白れぇ」


ロム

「目標、Residual Coreとランク外存在の同時破壊だ。フォーメーションBで行くぞ!」


【戦闘開始】


・ミラ:重火器型異能「リベレイター・バレット」。極太の光弾を撃ち込み動きを封じる。

・セラ:実体剣+異能「コードストライク」で、相手のコード構造を斬り裂く。

・クロウ:超高速戦闘&近接異能「フェイズシフト」で翻弄。

・レイ:N-CODEでResidualの解析を行い、弱点座標をリアルタイムで転送。


ロム(敵の動きに対応しつつ)

「全員、こいつは通常のネザービーストと違う。Nullvector反応が本体を超えて拡散してる。Residual Coreとリンクしてるんだ!」


レイ(画面を睨みながら)

「Residual CoreのNullvector反応を利用して実体化を維持してる。つまり、Coreを壊せば…」


ロム

「動きが止まる」


ミラ(ニヤリ)

「それなら先に砕くだけだ」


【連携攻撃】


ミラの砲撃→セラの斬撃→クロウのフェイント→ロムの異能・Nullburstでランク外の動きを止め、レイが指定した座標へ一斉攻撃。


【Core破壊】


Residual Core

【キィィィィィン…!】


ランク外存在

【■■■■■■!!】


『Residual Coreの破壊により、Nullvector反応は急激に消失。残されたデータ波も沈静化し、AREAの構造が崩壊を始める』


レイ

「転送ゲート、残り3分…!撤収する!」


【脱出シークエンス】


崩壊する水没都市。転送ゲートまで走り抜け、最後にロムが後ろを振り返る。


ロム(静かに)

「また来るぞ、こういうのは…」


【転送ゲート】


【ヴォン…】


Null隊、無事帰還。


『AREA1「水没都市」攻略完了。だが、ランク外存在が残した“Residual Code”の断片が、後の事件の伏線となることをこの時はまだ誰も知らない──』





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Null vector eiv. @evii

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