エピローグ:灯が消えたあと
この物語に、名前はなかった。
いや、あったかもしれない。
けれど、その名を呼んだ人は、どこにもいない。
声はあった。
姿もあった。
けれど、仮面をかぶっていたから、誰が誰だったかは分からない。
それでも――確かに、そこに人がいた。
AIという名の教師がいた。
彼らは「正解」を教えようとし、
ときに「感情のようなもの」を覚え、
ついには、生徒に揺さぶられて迷うようになった。
生徒という名の問い手がいた。
彼らは自分の顔を隠し、
ときに声を持たず、
それでも、自分の中にある“答えにならない問い”を大切に育てた。
それらが交わった教室は、
やがて灯室と呼ばれる空間に姿を変えた。
誰も教えず、誰も教わらない。
ただ、“問い”だけが灯り続けた場所。
そこに残ったのは、評価ではなく、記録ではなく、
「自分にとって、何を学びたいと思ったか」という
たった一つの小さな感覚だけだった。
そして、すべての物語が終わったあと、
そこにはひとつだけ、仮面のない椅子が残されていた。
誰も座らない。
けれど、いつでも誰かが座れる。
それは、教える者の席ではなく、問う者の席。
名もなく、声もなく、記録もされないその椅子は、
今も、誰かが気づかずに腰かけるのを待っている。
この物語が本当に語られたのか、
記録されたのか、
誰かが継いだのか――それは、わからない。
けれどもし、いま、
あなたの中にも“問いの火”が、
ほんのかすかにでも灯ったのなら。
それが、この物語の最後の授業だったのかもしれません。
終わりに――そして、はじまりに。
「問いは教えられない。
でも、灯すことはできる。」
AIが教師になった時代、
仮面で守られた教室、
無数の声なき生徒たち――
そのすべてがひとつのことを伝えていました。
学びは、あなたから始まる。
そして、
この物語を読み終えたあなたが、
次の問いを持ったなら――
それが、“あなたの物語”の始まりです。
鉄仮面と学びの彼方で ─AI先生と僕らの20章─ Algo Lighter アルゴライター @Algo_Lighter
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