コンセプトが素敵過ぎて、冒頭一行目から引き込まれました。
「幼い頃の夏の日に、もう一度出会いたくなり」と祖母のいる田舎へと向かう主人公。
アラフォー世代のサラリーマンとして日常に疲れてしまったショウタ。そんな彼を九十歳になった祖母が迎えてくれる。
ノスタルジック。そして夏休みの思い出。名作ゲーム「ぼくのなつやすみ」を連想せずにはいられない、雰囲気抜群のシチュエーションです。
幼い頃の思い出に浸りつつ、蛍を捕まえに行くショウタ。楽しかった夏休みの思い出が蘇る中、捕まえた「蛍」の姿がふと自分自身と重なり合うことに。
疲れ切った日常と、満たされない自己肯定感。それに苛まれていたショウタが、祖母との再会を果たして癒されて行く。
蛍のいるような田舎の情景が素晴らしいし、日常から離れて童心に返っていく姿がワクワクします。
まさに「夏休み」ならではの特別な空気が全編からひしひしと伝わり、読む者の心を癒してくれます。
一足早く素敵な「夏」の空気を感じさせてくれる、珠玉の作品です。
本作を読んで個人的に強く感じたのは、「忙しく働き続ける大人たちこそ、子供の頃に戻って心も体もリラックスしよう」ということです。
生きるためにはお金が必要で、お金を稼ぐためには働かなければならない。でも人間は機械ではないので、休みなく働き続けることはできない。いや機械でも休みが必要です。
そして身も心も仕事から離れてじっくり休むには、「子供の頃に戻る」という感覚に浸るのが最適でしょう。仕事を知らなかった子供の頃に。
ちょうどこのゴールデンウィーク。私は十数年ぶりに家族と10日ほど過ごし、完全に子供に戻っていました。大人になってから自分がやっていたことをすべて放り出して。
最初は「こんなことしていて良いのだろうか?」という感覚があったものの、連休を終えた今は「また頑張るか」という気持ちになれました。必要な時間だったと思っています(家族には負担をかけてしまいましたけどね😅)
忙しく働き、仕事に真正面から立ち向かい続けている方にこそ本作を読んでいただき、少しでも良いので自分に休憩をあげてほしいなと思います。