登場するキャラクターは二名。内藤とヤーコフです。
内藤だからナイナイなのですね。
となるとヤーコフは……という主題は脇に置いて、本作の魅力をお伝えしましょう。
一言で表すなら、掛け合いの妙です。
たわいもない日常の会話は噛み合ったり、嚙み合わなかったり。
言われてみれば「確かに!」と思うウィットに富んだ内容から、「どうしてそういう返事になる?」というブッ飛んだものまで。
読み進めるうち、だんだんとクセになってくることでしょう。
――――でもね
ジャンル、ホラーなんですよ。
そしてそれは間違っちゃいない。
最後に明かされる真相。いろいろ考えてしまいます。
いやー、これは怖いわ。
会話のセンスなんかが秀逸で、「ここにしかないクオリティ」を存分に味わえる作品です。
主人公の内藤こと「ナイナイ」は、友達の記憶というと、なぜか「ヤーコフ」のことばかりになっていると反芻する。
ヤーコフとの「とりとめのない話」をした記憶がそこから紐解かれて行くが、読者は読み進める中で「ん? ……これ、は?」と幻惑されていくことになります。
「将来の夢はケーキ屋さん」とナイナイが言えば、ヤーコフは「ケーキ屋さんの窓になりたい」と返してくる。
……ヤバい! この子、電波だ!!!
この会話の雰囲気、90年代の初代PSのゲームでたまに見かけた、「電波を受信してる系の少女」を彷彿とさせられます。
「serial experiments lain」、「TIZ ‐tokyo insect zoo‐」など、会話に電波なものが登場する作品の数々。
ライトノベルなら「ブギーポップは笑わない」なんかにも通ずるセンスがあります。
果たして、このヤーコフの正体は。ナイナイとヤーコフの会話は、一体どんな意味を持つものなのか。
出てくる会話の一つ一つも面白く、「ちょっと変わった青春小説」と思ってアハハと読み進められること間違いなし。
散りばめられた伏線と、ラストで全てを呑みこむような真実。
かつてない読書体験が味わえる作品です。