〜小さな僕から〜 ⑨
「とりあえず帰る?」
保険医は適当に診察したあと、“僕”に尋ねてきた。
さすがに教室に戻るメンタルではなかったため、小さく頷いた。
「少し休んだら帰りなさいね」と言い残し保険医は保健室から出ていった。
誰もいなくなった空間で、“僕”は大きなため息をついた。
(どうしよう⋯というかどうすることができる?)
どれだけ考えても不登校になるという答えしか浮かばなかった。
そうなるともはや学校にいることすら違和感を感じ始め、休憩もそこそこにすぐに保健室を後にした。
“僕”は霞んでいく視界を何度も拭いながら足取り重く施設へと帰った。
玄関で“僕”を見つけた担当の先生は血相を変えて走ってきた。
「どうしたの?学校は?何で帰ったの?」
矢継ぎ早に質問をされる中で、“僕”は事の顛末を伝えた。
先生は黙って最後まで聞いて「明日だけ学校に行ってみなさい。それで無理だったらまた考えよう」と伝え、背中を擦ってくれた。
母性を知らない“僕”は、ただ固まって手の温もりを感じていた。
桜はもう完全に散っていた。
“僕”を残して季節はもう夏の準備へ向かっていた。
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