メイドよ、恋する乙女になりなさい
@izumidon
第1話
「メイドよ、あなた恋してる?」
お嬢様が突然そんなことを言ってくる。
「恋ですか?……必要ありません。」
「強がらなくていいわ。この仕事だもの、出会いが少ないのは当然ですもの。」
あんたは大人か?なんでまだ小学2年生の子供にこんなこと言われなきゃならないんだよ……
「強がってません。お嬢様のお世話がありますので恋なんてしている暇はありません。」
「嘘よ。あなたいつも部屋でぐーたらしてるじゃない。屋敷の外に行くのが大変でもたまには外に出ないとダメよ、体がなまっちゃうからね。って別にそんなことはどうでもよくて!」
お嬢様は手をテーブルに叩きつけて言う。
「いい?あなたはこれから恋する乙女になるの。」
「そうは言いますけど誰とそんな恋をするんですか?」
そう私が聞くとお嬢様は近くにあった鞄の中からなにやら重要そうな書類をだしてきてこう言った。
「アルバイトを雇うことにしたわ!あなたが合わないと思ったら適当に理由を付けて追い出せばいい。ああ、変な罪悪感は抱かないでね。ちゃんと10万円をどんなに短く勤めても報酬としてだすことにしているから。」
「それなら安心ですね。でも、それを私が受け入れるメリットってなにかあるのでしょうか?」
「私はね、恋愛もののドラマやマンガ、小説を観るのが大好きなの。」
「存じております」
「特に恋している乙女を見るのが大好き!だから、一番身近にいる貴方が恋をすればいつもその顔を眺められるじゃない?」
「はぁ、そんなのをみてなにが面白いのか……
結局私にはメリットが無いってことですね。
では、この話はなかったことに」
「給料3割アップでどう?」
「お嬢様、さっそくアルバイトの方を募集しましょう。私、お屋敷の前に貼ってきますね!」
「なんて早いのかしら……
いつもあれくらいテキパキ仕事をしてくれればいいのに。あ、でも大事なことを言い忘れたわね」
「恋してもその思いは伝えてはダメって
時間はあるし、また後で言えばいいわね!」
給料のことで頭いっぱいでこのことを聞いていなかった。
メイドよ、恋する乙女になりなさい @izumidon
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