現役薬剤師物書きが圧倒された薬剤師ディストピアヒューマニズム小説の白眉

「薬剤師って、いらなくない?」から始まったのが、コミックゼノンでまもなく完結予定の薬剤師お仕事マンガ『アンサングシンデレラ』だった。
だがこの薬剤師小説は、なんと既に「人間の薬剤師は不要」とされた近未来SF薬剤師ディストピア世界から始まっていた!!
 いやあの正直「ちょっとベタかな?まあネタだろうしな」って思ってました前作がツイッター(現在Xを僭称してるアレ)で始まった時。だってスパーテル(粉薬をはかるスプーン)で戦う薬拳流(やっけんりゅう)とか、投薬姿勢を修正する修行とか、技の名前が「強力ポステリ斬」(強力ポステリザンという痔の薬が実在する)とか、ツッコミどころに事欠かないじゃないですか?!あげく全ての投薬を統治する人工知能に戦いを挑むって、SFでも定番のヤツを臆面もなく!
…でもねえ…、読まされちゃうんだなあ、これが。
これ読んでるあなた、薬剤師ですか?それとも一般の方ですか?まあどっちでもいいや。お聞きしますが、薬剤師って必要だと思います?そしてその理由は?
それをねえ…たぶんけんたろん先生はどうやったら伝わるかなあ?って一生懸命考えたあげくが(あげくって言うなwww)この小説だったんだと思います。そしてそれが多分大正解だったと思うんだな私は。
薬剤師という職業がある理由はいろいろあります。制度がどうなってるとか、法律がどうとか、こういう医療事故がありましたよとか。けどね、そういうお堅い話をしたところで「でもそれってあなたの既得権益ですよね?」って言われたら終わりなんですよ。いやもちろんアンサングシンデレラでももっと日常に即した話はありましたが。
ところがこのリストコードは、「人間の薬剤師が不要とされた近未来ディストピア」というぶっ飛んだSF世界観に、若くて美人の女性薬剤師が病弱な男の子を守って正義の薬拳流スパーテルで戦う武侠ものというエンタメ要素にクスッと笑えるネタを適量加えるという形で「薬の現場に人間の薬剤師が必要だ」というメッセージを説教臭さゼロでグイグイ面白く読ませることに成功してるんですよ!これってすごくね?!
(閑話:ところで人間と人工知性体の対立というテーマは往年の名作『戦闘妖精雪風』(神林長平)でも「戦いに人間は必要だ」というセリフが出てきましたね同じですね!(休題)
そしてさらにもう一つ。この作品を「読ませる」モノ、「共感させる」モノにしてる要素は何か?というと、それは「ヒューマニズム」なんじゃないか?と私は思います。
薬の現場に人間の薬剤師が必要な根拠は数々あれど、結局のところ「ヒューマニズム」が欠けていたら、医療や福祉やその他の人を救う業務は成り立たないじゃないですか。
ユイという薬剤師が立っている根拠は、ヒューマニズムです。
機械的なルールでは救いとれないケースを救えるのは、人間の判断です。
だからこそ、他のみんながついてくるし、読者も共感できる。
薬剤師は「うんうん。僕らのやってることは間違いじゃない」と思えるし、一般の方も「そうか、そうやって人が人を救うんだ」って納得できる。
これをねえ…今まで小説なんか書いたこともない(…んですよね?)けんたろん先生が書いちゃったんだからスゲーわ。だってほぼほぼハリウッド映画のノリじゃん!そしてchatGPTだのGrokだのオープンAIな時代にバッチリ合わせてきてるじゃないじゃないですか敵がAIって!本当は誰か有能な編集さんがついてるんじゃないの?!って疑うレベル。そしてさらにヒューマニズム小説だから、向かう先は希望の未来なんですよ光しかない。薬剤師と薬に関わるすべての人(ってことは全人類なんですよ!)の未来に光があると、この作品でぜひ見せつけてくださいよけんたろん先生!(って長すぎなんだよ!