第19話 あとがきに代えて

 「タンデム!」をお読み頂いてありがとうございます。

 登場人物のヒトミケンジ君は小学校1年生のとき同じクラスにいた男の子でして、実在の人物なんです。彼のことをいつか物語の登場人物として書いてみたいと思っていたのです。

 彼は物語の通り、男の子にしては目がくりっと大きくて髪の毛もさらさらで女の子のようにかわいらしい子でした。お勉強も運動もできました。でも引っ込み思案で男子と遊ばないで一人でいるときがよくありました。そんなとき私をはじめとする女子がここぞとばかりに彼を誘って一緒に縄跳びやゴム飛び、鬼ごっこなんかをして遊んだのです。

 物語では彼が2年生になるとき転校してきたことになっていますが現実は1年生のクラスメートでした。でも私が2年生になったとき校区の変更のため私は隣の校区の小学校に通うことになってしまったのです。最後の登校の日、私は彼に告白しました。「好きやで」と一言だけ言いました。そう、彼は私の初恋の人なのでした。

 そのときの彼のびっくりした表情はいまでもはっきり目に焼き付いています。今なら分かるのですが小学校1年生の男子にとっては男と女が好きとかってまだ分からないんですよね。もちろん彼からの返事はありませんでした。それから彼と会うこともありませんでした。彼はあれからどんな人生を歩んだのだろうか、という妄想が「タンデム!」のテーマになっております。まさかBLの主人公にされるとは思ってもみなかったでしょうね。

 この物語にはバイクも重要なアイテムとして登場します。これは私が大学時代にバイクにはまった経験から来ています。ソウちゃんこと広田宗男君は大学時代に付き合っていた人がモデルになっています。彼のバイクにタンデムするとき私は彼のブルゾンのポケットに手を突っ込んでしがみついていました。理由は手が寒くないからです。カーブでバイクが傾くときは正直怖かったです。でもどうすることもできないから必死で彼にしがみついていましたね。へたに動いてバランスを崩されてコケたら困るし。

 そんな彼に触発されて私も教習所で中型免許をとりました。そしてそのまま大型、限定解除免許まで取得したのです。限定解除の試験に合格したのは私が先でした。そのとき彼は試験に落ちちゃって。ずいぶん愚痴をこぼされたことを覚えています。

 繰り返し近況ノートにも書いていますが私の描く物語は全部どこかに自分の経験談が入っています。私はゼロからお話は作れない人です。他の作家さんはどうなのでしょうか、分かりませんが。

 「タンデム!」という物語では「人見」という名前がキーワードになっています。「人見」って珍しい名前だと思います。私がこれまで読んだ小説で「人見」という名前の人物が登場する作品は唯一有川ヒロ様の「レインツリーの国」という小説だけです。最近では「人見」と言う名前の主人公が登場するテレビドラマもあるようで、「人見」という名前も今後は少しずつ認知度が上がって行くのかもしれませんね。

 初恋のヒトミ君がまさかこの作品を読むことはないと思いますが、自分がBLの主人公になっていると知ったらどんな顔をするかなあ。もしムカついたらゴメン! 先に謝っとくね。(笑

 そう言えば下の名前が「ケンジ」って登場人物が私の作品に時々登場します。「眼下に湖面を臨むピークにて」の高山さん、「ある愛のうた ~僕から彼女への贖罪としての記録~」の中山君。それらは初恋の彼から連想して命名したものでした。そのくらい彼は今も私の心の中にごく自然に存在しているのですね。


 

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