第1話 鋼の空と幻影の声
その甲板には士官候補生20名が整列し、16歳のユウト・カワサキも
またその一人として立っている。
父の背中を追い、いつか世界を守る艦長になることを志し、彼はこの場に
臨んでいた。
サクラギ教官が一歩前に出ると、鋭い声が響いた。
「敬重!」
その号令に、候補生たちの緊張が一層高まる。
《ソラリス》艦長が一歩前に出て、落ち着いた口調で語りかける。
「本日の訓練はアサルト・ギアによる戦術運用の初歩だ。
厳しい内容になるが、正規パイロットへの道はここから始まる
──ただし正規パイロットになれるのは女性のみだ。
とはいえ、男女問わず、全員に任務遂行能力を求める。心して臨んでくれ」
艦長の視線がユウトを捉える。
「ああ、君がユウト・カワサキ君だね。──君の父君には大変お世話になった。
君も頑張るんだぞ」
その言葉が胸に熱を灯した。
艦長が静かに一礼し、そのまま甲板後方へと歩み去った。その後を見送りながら、サクラギ教官が一歩前に出て号令を発した。
「ミッションは3人1組。教官1名が随行する。訓練中のミスは許されない、
理解したか!」
「イエス、マム!」
説明を終えたユウトはミッションルームを後にし、背後から声をかけられた。
「おい、ひよっこ。お前の訓練教官は私だ」
振り返ると、銀髪のサクラギ教官が立っている。
「発艦後、操作説明が終わったら、すぐに私の指示に従え」
「イエス、マム!」
整備エリアを抜け、搭乗口へ。
並ぶ訓練用アサルト・ギアは旧式ながら、全高10mの巨体は圧倒的な存在感を放つ。
胴部のカプセルに身体を預けると、金属扉が閉じ、トレースシステムが起動。
立体ホログラムの計器が鮮明に浮かび上がる。
「やっほー! 私はアンジュ、戦術支援AI“ゴースト”よ!」
ユウトは驚き、心の声で呟く──(AIに“姿”があるとは…)
「操作は簡単だよ。しゃがむと下降、背伸びで上昇、左右傾きで旋回、ジャンプでブースト。
左右腕にレールガン、肩と脚にミサイル。ロックオンと砲撃誘導は任せてね」
アンジュの無邪気な口調に、ユウトは覚悟を新たにした。
甲板での発艦準備中、サクラギ教官の無線が響く。
「おい、ひよっこ。私は後ろから見る。発艦しろ!」
「イエス、マム!」
20機が一斉に飛び出し、しばらくして警報が鳴り、訓練飛行が続いた。
《未確認機、複数接近中――!》
「この空域に侵略者が来るはずがない!」
「訓練中止、迎撃に移行! 死んでくれるなよ!」
レールガンとミサイルが閃くも、大半の敵機は早々に撃墜され、残存は20機以上いた仲間は8機にまで減少。
しかし、そこに特別な装甲を持つ新型の敵機が現れ、仲間たちの悲痛な叫びが空を震わせる。
「助けて…!」
「くそ、死にたくない…!」
ユウトは目を閉じかけたが、アンジュの声で我に返る。
「くそ…装甲が硬い…!」
「慎重に! 突っ込むな!」
弱音を吐くユウトの横で、仲間機が爆散した。
「ユウト! 一斉砲撃支援を要請。90秒で着弾! 囮になって時間を稼いで!」
「わかった!」
秒針が刻まれる中、ユウトは敵の注意を一手に引き受けて動く。
「60…50…30…」 「砲撃準備完了! レーザー誘導ライン、セット!」
「 全艦砲撃開始! あいつの動きを止めろ!」
残存機は声を合わせ、必死の連携を続けた。
迎えたゼロの瞬間、一斉砲撃が炸裂。イノベイターは爆煙の中で崩れ落ちたが、その直前の一閃がユウト機を直撃した。
──ドンッ。
衝撃に視界は白く塗りつぶされた。
撃墜され、意識がもうろうとする中、遠くで回収部隊が何かを話している声が聞こえた。
「こりゃひでぇ、機体はアウトだな。 頭も潰れてAIチップも壊れているわ」
「おい、こっちを見ろよ。 こいつは新型だよ。しかも装甲とリアクター効率は驚異的だ…」
数日後、《ソラリス》艦長室にて。
艦長から通達を受ける。
「訓練は継続する。ただし今度は……新型機でな。 わかったら早く行け」
「イエスサー」
艦長室を後にすると、整備エリアを抜け、搭乗口へ。
新たに割り当てられた機体。その装甲の一部はどこかで見たことがある感じがした。
あの時の敵に似ている──だがそれを言葉にはせず、ユウトは再び搭乗した。
カプセル内、トレースが完了した瞬間、立体映像が現れる。
「こんにちは。私はアーシェ。君のサポートに配属されたAIだよ」
どこか懐かしい、けれども確かに初対面のその声。アーシェは微笑みながら、ユウトに語りかける。
「行こう、ユウト。今度は……君と一緒に戦える気がする」
――新たな戦いは、今、幕を開けた。
アサルト・ギア アーシェ ターナー兵長 @Turne
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。アサルト・ギア アーシェの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます