どんなところが好き?

金浦桃多

どんなところが好き?

  

『どんなところが好き?』


 確かに、そう聞いたのは僕だった。

 

◇◇◇◇◇◇◇◇ 

 

陽葵ひなた。今日、俺ん家こない? お前、子猫と遊びたいって言ってただろ?」

「行く!」


 幼なじみである悠斗ゆうとの母親が引き取った子猫の話を聞いてから、陽葵ひなたは何度もそう言っていた。

 悠斗のスマホで撮られた写真を見せて貰っては、その可愛さに夢中で見ている。

 しばらくの間は、悠斗の家に慣らすために会いたくても会えなかったのだが、ようやく対面できることになった。陽葵は目をキラキラさせて返事をした。


「放課後、楽しみにしてる!」


 いつものように一緒に帰るが、久しぶりに悠斗の家に遊びに来た。

 

「 陽葵、入って」

「おじゃましまーす」

「いらっしゃい、陽葵くん。」

  

 悠斗の母親は、幼稚園の頃から知っているので、完全に身内扱いされてる。

 

「今日は、ゆっくり子猫の相手してやって」

「え? いいの?」

「妹は今日遅くなるって言ってたから、邪魔は入らないぞ。ほら。」

 

 悠斗からキョトンとした顔をした子猫を渡される。

 

「うわぁ、可愛いなぁ。はじめまして、子猫ちゃん」

「俺の部屋に連れていこう」

「うん!」

 

 そう言うと、二階にある悠斗の部屋に通される。猫じゃらしを渡された陽葵は、早速、子猫相手に遊び始める。

 人見知りすることもなく、陽葵を相手に遊び始める子猫を見て、悠斗に笑顔でお願いした。

 

「なあなあ、子猫と一緒の写真撮って」

 

 悠斗は頷くと、スマホをコチラに向けてシャッターチャンスを狙っている。陽葵は子猫を抱き上げると満面の笑みでカメラを見た。

 

「ほら、こっち見ろ」

 

 悠斗はそう言うが、子猫は遊び足りないのかソワソワしている。ようやく、視線が悠斗の方に向かった瞬間に、カメラに収められた。

 

「悠斗、その写真を僕のスマホに送って」

「いいぞ」

「ありがとう! うん、いい顔してる」

 

 自分のスマホに送られてきた子猫の写真を見て、陽葵は満足気だ。

 

「……可愛いな」 


 悠斗が愛おしそうに、写真を見ていた。

 

「だよなー。どんなところが好き?」

「そうだな……いつも元気なところ」

「あはは! 確かに全力でじゃれてくるな」


 必死に猫じゃらしを追う子猫を見て、陽葵は可愛いと思う。

 

「目をキラキラさせて、真っ直ぐ見つめてくるところ」

「うんうん」


 確かに、キラキラした目をして全力で捕まえた穂先を噛み噛みしている。

 

「俺の事を信頼して、ピッタリくっついてくるところ」

「確かにそれは可愛いな!」


 悠斗に懐いているんだな、と陽葵は思った。

 

「うん。全てが可愛い」

 

 悠斗が珍しくデレている。少し子猫に嫉妬しつつ陽葵は言った。

 

「本当に好きなんだなー」

「ああ。昔からずっと好きだ」

「……ん?」

「お前の事だよ、陽葵」

「えっ、僕?」


 悠斗の真剣な顔に、みるみる陽葵の顔が赤くなっていく。

 

「陽葵も俺の事が好きだろ? わかりやすいところも好きだ」

「ええっ!」


 隠していたはずの恋心が、とっくの昔にバレていた。

 

「陽葵は、俺のどんなところが好き?」

「そ、それは……」

「ん?」


 優しい声で聞いてくる悠斗に、陽葵は目を潤ませながら悠斗を真っ直ぐ見つめて、素直に答えた。

 

「せんぶ好き」

「……可愛い」


 悠斗は、陽葵を思い切り抱きしめる。

 

 子猫は、イチャイチャしはじめた二人を、不思議そうに見ていたのだった。


 この日、陽葵ひなた悠斗ゆうとは、幼なじみから恋人になった。



 ~おしまい~



 

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どんなところが好き? 金浦桃多 @kaneura-momo

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