第3話
まただ。
また、何か喚いている。
「なんでアナタはいつもそうやって他人を見下して、ちゃんと話を聞こうともしないの!?」
女は何か喚いている。
全く「話」にならない。
またオレが悪者か?
自分の何が悪くて、オレの何が正しいのか、オレの嫁なのに分からないのか?
オレは溜息を吐く。
「何?その溜息?」
女が喚く。
「本当に『話』にならんなぁ」
オレは呟く。
「『話にならない』ですって?少しでも『話』にする気があったの?」
女は喚く。
「話」にならないのはオマエだろ。
「なんでオレがオマエに『話』にしてやろうと思わなきゃいけない必要があるんだ!」
オレはテーブルを蹴って立ち上がる。
テーブルの上のケーキが揺れる。
ケーキの上の蝋燭が倒れて、火が消える。
「お前が『話』にならないから、オレが困ってるんだろうが!」
天面を叩く。
グラスが倒れる。
「アナタは今までアタシや他の人に寄り添って、少しでも『話』を擦り合わせようとしてた!?」
女が喚く。
「何だ!?オマエはオレの誕生日でさえ少しは物分かりよくできないのか!?」
「だから!今日はちゃんとケーキも用意したじゃない!」
ケーキがあるからなんだってんだ。
オレの「話」を理解しようともしないで。
そうやってオレを「悪者」にするんだ。
「ケーキがあるから何だ!オレの言う通りにしていれば良いのに、裏でコソコソオレの悪口を言って、こう言う時だけ擦り寄りやがって!」
オレはテーブルの上のフォークを掴む。
「止めて!」
女の喚き声と同時に、オレはダイニングにあった2人の結婚写真をフォークで破る。
オレは再婚だったから、2人の結婚の思い出はあれだけなのに。
「ちょっと!」
女の喚き声。
オレはテーブルを横倒しにする。
オレの誕生ケーキがグチャグチャになり、オレのバースデープレートが破れる。
嫁は茫然とした後、泣き崩れ、それをすぐに静かになる。
泣けばこっちを悪者にできると思ったら大間違いだ。
「もう……むり……もう、別れます」
女が喚く。
別れるだって?
オマエみたいな間違いだらけの女がこの先どうしようってんだ?
全く「話」にならない。
「実は、もう別れようと思って弁護士とも相談してあったの」
女は涙を落としながら喚く。
「でも、せめてアナタの誕生日くらいは良い思い出にしたくて……せめて、アナタの好きなあのお店のチョコレートケーキにしたのに……」
女は喚き続ける。
「もう、準備はできてるから、今から出ていきます」
女は喚く。
「幸せになんて、とても言えません。さようなら」
女は一通り喚くと、1時間もしないで出て行った。
なんでだ。
なんでまた、こうなるんだ……
オレは親父みたいに、ちゃんと家を治めたいだけなのに……
話 @Pz5
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