私は青空が嫌いだ

テマキズシ

空模様


私は青空が嫌いだ。






「…はあ。」


会社へ向かう道中。私は宇宙まで見えると思えるほどの青空を見ながらそうこぼす。


あの日君は死んだ。私が忘れてしまったお弁当を届けに行く途中、トラックにひかれて。


もし私がお弁当を忘れなければ…。君は生きていたかもしれない。今でもそんなことばかり考えている。


グチャグチャに潰れた体。始めてみた時は彼女の体だとは思えなかった。


しかし君の大好きな青空色のハンカチを見て間違いなく君だと分かった。オーダメイドの特注品。私が彼女の誕生日に贈ったものだ。


その日からだ。こういった青空の日は嫌なことが起きる。


仕事でのミス。ご飯の買い忘れ。病気にかかる等。何より君がそばにいるような錯覚を覚え、涙が止まらない。もう忘れていたいのに。


不幸が起きたのは今日もそうだ。今私は信号無視の車にひかれ、空を眺めている。


周りがワーワーうるさい。首から下の感覚がなく青空から目を背けることができない。力が抜けていくのが分かる。


これは罰なのだろうか。私がお弁当を忘れたことに対する彼女の怒りなのだろうか。


頭がまともに働かない。視界はボヤけてきた。


私はどうやらここまでのようだ。もし死後の世界があれば私は地獄行きだろうな。彼女を殺したのは私。天国になんて行っていいわけがない。


その時、不意に体が冷たくなった。青空が次第に曇っていきポツポツと雨が降ってきた。


心臓の鼓動が消えるその瞬間。何故か天にいる彼女が泣いているように見えた。






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私は青空が嫌いだ テマキズシ @temakizushi

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