ADULT

空繰 巧

大人って

子供の頃の夢は何だっただろうか。

なりたかった理想は何だっただろうか。

雲ひとつない晴天に問い掛けても当然、答えは来ない。



サッカー選手だった様な、

ケーキ屋さんだった様な、

アイドルみたいに人を笑顔にする人たち、

格闘家見たいに強くてかっこいい人たち。

どれだったかなと曖昧な記憶を探りながら、風に攫われる灰を目で追いかける。



あの頃に確かに持っていた叶えたい夢だとか未来だとかは、いつの間にか望む事もやめて、気づけば歳を取り「大人」と呼ばれる所まで来てしまっていた。



中身なんてこれっぽっちも詰まってやしない

形だけの大人になってしまったと煙を吐き落とす。



得るより無くしていく世の中。

祈る事すら出来なくなって縋る事もままならない世の中。

沢山人はいるのに無性に苛まれる孤独感。



子供の頃は微塵も想像できなかった。

大人はこんなにも惨めなんだっていうことを、

皆それを取り繕って、平然を装って生きてるという事を。





大人になりたいと夢見たあの頃。

子供の頃に戻りたいと願う今日。



そんな日々の積み重ね。

そんな日々の中を進む。

そんな日々でも生きる。



それが大人になると言うことなんだろう、

と自問自答にふけ煙草の火を擦り消す。




子供の頃の夢は何だっただろうか、

なりたかった理想は何だっただろうか、

なんて無くした答えを探しながら、今日もまた煙草を咥えて街へ駆ける。

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ADULT 空繰 巧 @KarakuriTakumi

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