第6話 コンピュータの本領・レーダー

 レーダーというものを知っているだろうか。レーダーは電波を照射しその反射によって敵の位置を調べる装置である。そして、魔法と電子回路におけるもっとも大きな違いは、冷却問題と集積度である。魔法は冷却が必要なく、また物理的な精度問題に悩まされることもない。そして精度問題に悩まされないため集積度も高くなる。


 レーダーは電荷の移動をある一定の範囲で行える素子を大量に用意することで作られる。これはフェイズドアレイレーダーと呼ばれる種類のレーダーだ。


 これには大量の素子に制御信号を送る必要があるためそこそこの性能のコンピュータが必要だ。だが、ある。あるから、できる。ではどのように制御をするのか、理論を構築しよう。




 指向する角度を-π/2~π/2ラジアンとしよう。 (これからπは変換がめんどくさいのでpiと表記する。)


 レーダーの素子の操作軸をx,y,zとして、また指向軸をX軸,Y軸としてその角度をレーダー正面を0ラジアンとして、さらに水平の出力波の位相をtとしたとき、また出力をAとしたとき、


 sin(t)*cos(Y)*A=x

 sin(t)*cos(X)*A +=y

 sin(t)*A(sin(Y) + sin(X)) =z


 と表せる。また、素子の座標を(a,b,c)としたとき、かつBを定数としたとき(0,0,0)の素子を基準に


 sin(Y)*a*B + sin(X)*b*B + cos(X)*c*B + cos(Y)*c*B

 =B(sin(Y)*a + sin(X)*b + cos(X)*c + cos(Y)*c)


 だけ位相をずらす必要が生じる。たぶん三角関数大嫌い文系の皆さんはタイムアウトしたところだろう。すまない。


 まあ超簡単に言うと、「向ける方向変えるんだから当然それぞれの素子の電波の向きも揃える必要があるよね。あとタイミングも重要だよね」とこいつらは言っているわけである。


 そして受信時はさきほどのずらす位相だけ信号をずらし計算することによってどこからどんな電波が来ているのか、自由に受信できる。だって複数の計算が可能なら複数の数値だけずらせるからね。パラボラアンテナのように複数のアンテナを用意せずとも複数の指向性電波を発信できる。だってさっき計算した受信用の制御信号をその発信したい方向の分だけ足していけば良いのだから!


 そして三角関数はコンピュータでいちいち計算させるのは馬鹿らしいのであらかじめコンピュータに記憶しておいてもらおう。それを参照してもらうのだ。まあコンピュータがなければまずこんなのは無理だろう。やっぱりコンピュータは汎用性高くて楽だわぁ~


 はい、これでもうできますね。だって三角関数と定数倍しかねぇもん。案外簡単だろ? あ、簡単じゃない? 高校でやっただろ。 それでもわからん? あきらめろ、お前には数学の勉強というやるべきものがある。カクヨム読んでないで勉強しろ。OK? いいか? そもそも俺は三角関数表なんて持ってきてないんだから手計算で出さないといけないんだぞ? 三角関数表があるだけマシじゃないか。




——少年三角関数計算中......



 というわけで三角関数が計算できたからもうレーダーはできたも同然である。開発完了! これで遠距離における「目」ができたな。




 追記・三角関数表の計算方法

 今回計算すべき三角関数表は円周を二の累乗で分割したとき、一目盛りずつ増やしていったときのsin,cos,tanである。tanは一旦放置することにしよう。

 ところで、角の二等分線の書き方を覚えているであろうか。角の二等分線は二本の線とその角の点を中心とするある円の2つの交点から等しい距離にある点と角の点を結べばできる。これを代数的に考えてみよう。


 まず、めんどくさい計算を省くため、交点は原点であり、x,y平面で表す。そしてある円の半径を1としてその時の交点だけ考えることにしよう。このとき、この円上にある点α(a, A)は√(a²+A²)=1である。(分かりにくいためルートの中身はカッコで囲みます)また、0ラジアン、角度の基準を(0,0)と(1,0)を通る半直線とし、pi/2ラジアンの半直線は(0,0)と(0,1)を通る。このときXラジアンの三角関数はその半直線がある円周上の点βを通るとした時、sin(X)はβのy座標、cos(X)はβのx座標である。で、角の二等分線はその2つの半直線が通る円周上の点のx,y座標をそれぞれ平均した点を通る半直線だ。


 これを使い、sin(pi/4)を計算してみる。pi/4はpi/2の半分であるため0とpi/2ラジアンの半直線の角の二等分線で求められそうである。なので(1,0)と(0,1)のx,yの平均をとると、 (1/2,1/2)である。しかしこれの原点からの距離は1ではないため1になるようにする。すると(√(2)/2, √(2)/2)である。√2はおよそ1.41421356であるためsin(pi/4)はだいたい0.7とわかる。このように角の二等分線をひたすた取っていくことで三角関数を計算できる。

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計算機万歳! ~異世界、コンピュータを添えて~ 厨二病罹患者 @tyuunibyourikannsh

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