閑話 異世界の歴史・ヴァルムスの戦い

 この戦いは、人魔大戦におけるターニングポイントであり、また現代理論学における始まりの時代とも言えよう。


 この戦いの始まるおよそ三ヶ月前、すなわち神聖歴511年4月24日に当時局所的に発達していた魔法科学によって異世界から当時勇者と呼ばれた存在を転移させた。

 彼の名は山田裕大、魔法科学を理論に拡張し、一般化や拡張などの順序だった理論や軽視されていた数学によって文明を発展させた男である。

 彼は元いた世界における技術をこの世界に合わせた技術体系に変化させ、人類連合軍に多大な影響を及ぼした。その一つが新兵器だ。彼は最後まで最前線で戦うことは無かったものの、歴史上で最も大きな影響を与えた個人であろう。


 511年6月23日、魔族同盟国連邦本土を出発した連邦軍、当時魔王軍は連邦と旧連合国国境であった海峡、マレ・マグヌム・テルミヌム(通称、M.M.T.)を7日かけ渡り、征服した連合領土を進み、同月13日、人類連合の最後の都市、ヴァルムスまでおよそ240km地点まで接近、連邦軍は魔獣に乗っており、行軍速度はおよそ1日60kmほどであった。


 同日午前8時、偵察機として運用されていたB1爆撃機が行軍中の連邦軍を発見、即座に開発されたばかりの通信機を使用し報告された。また、240kmはワイバーンの行動半径250km内であったため、連邦軍はワイバーンによる航空攻撃を計画し、これを4000、発進させた。

 この動きを感知した連合軍はこの世界で最初の戦闘機、F/A1戦闘攻撃機450機を発進、対処に当たった。午前8時34分、ワイバーン隊4000とF/A1戦闘攻撃機隊450機が接敵、連邦軍損害およそ4000、連合軍損害0という圧倒的勝利を飾った。


 勝因は速度性能と武装にあった。F/A1は二重反転プロペラと後退翼を採用しており、時速800kmを実現していた。しかし生物であるワイバーンは時速125kmが限界であった。その圧倒的速度差により、一撃離脱を決められ連邦軍は敗北した。

 また武装はF/A1が連射性にすぐれたM1機関銃を搭載していたのに対し、ワイバーンは騎手の手動である。ゆえに連邦軍は数少ない攻撃チャンスの時全力で反撃したものの当たらなかったのである。




 その後、制空権を失った連邦軍はB1爆撃機による熾烈な爆撃をヴァルムス周囲に敷設された鉄条網から10km地点まで受け続けることになった。



 来たる511年7月14日、地上戦がついに始まった。連邦軍は最初騎兵突撃を敢行した。

 午前9時13分、魔王軍による騎兵突撃が敢行された。機関銃陣地の激しい攻撃にあうも、魔王軍の数は非常に多く、鉄条網への接触を許してしまった。

 しかし魔王軍の「数をもって突撃、敵陣を突破する」という作戦は絶望的に人類連合軍が構築した機関銃陣地+鉄条網という配置に弱かったのである。


 騎兵はそもそも魔獣など動物に乗っている分被弾面積が大きく、機銃掃射の影響を受けやすい。ついでに指揮官の服装が目立ち非常にわかりやすかったことも敗因であろう。それにより指揮官はことごとくライフル銃兵による狙撃の餌食となったのである。


 一部の一般兵が味方の死体の中に隠れるという、非常に正しい方法で機関銃の射線から逃れたが、これも意味は無かった。なぜなら、人類連合軍が放火したためであり、その結果逃げた者は機関銃陣地の餌食に、逃げなかった者は火災の餌食となったのである。



<まとめ・重要語句>

・新兵器

・511年4月24日 勇者召喚

・511年7月14日

・人魔大戦におけるターニングポイント

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