波の眠る場所

@yorunokagerou05

プロローグ 風の音がする日

澪の納骨が終わった。

雫とナギは、海の見える坂道をゆっくり降りていた。


澪のお墓は、少し高台にある。晴れた日には、海のきらめきがよく見える。

澪が”ここ、風が気持ちいいからいいね。私のお墓あの場所にしようかな”なんて二人で笑いあった日を思い出す。


風が吹いた。

ナギの耳が、ふわりと揺れた。


私たちは、坂を下りた先の海辺に出た。


潮の匂い、砂の白さ、波の音。どれも、澪が好きだったもの。


私は、ナギと並んで堤防に腰を下ろした。


遠くで小さな漁船が通り過ぎる。空にはひとすじ、雲が流れていた。


澪のお葬式は、澪が望んだ通りにできた。

ノートに書かれていた順番で音楽が流れて、来てくれた人たちはみんな静かに涙をこぼしていた。


「ねぇ、ナギ」


声をかけるとナギが、顔をあげてこちらを見た。


「澪、ちゃんと生きたよね」


ナギは一度だけ、しっぽを静かに振った。

私は、泣くでも笑うでもなく、ただ静かに風の音を聴いた。


波が静かに打ち寄せて、引いていく。

その音の中に、ふと澪の声が聞こえた気がした。


私の中にまだ、ちゃんと澪がいる。


これが澪という一人の人間が生きた、波の眠る場所。

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