ロスト〜記憶喪失少女を幼馴染にしてみた〜
じじゅゅ
ドメスティック
「....っ!」
言葉は発していないはずなのに、息を呑むことしかできないのに、
宇宙のように未知なはずなのにすべてわかりきっている。
目の前には横たわっている人、横たわっていて服には血が付着している人、
横たわっていて服には血が付着して包丁が突き刺さったままになってる人。
その包丁は刀身の全体突き刺さっており全く抜ける気がしない。
その無惨な姿にどんどん吸い込まれてくしかし見れば見るほど今起こってる全てが
単純なことに気づく。
その荒唐無稽な事実から目を逸らした先にいるのは混沌とした宇宙の目をした
「なにか」である。
なるほど私の花はたった今全て枯れたらしい過去も未来も何もかもが。
そしてそれと同時に世界は狂気で満ちていることに気付かさせる。
「羽が生えてる」
ぴぴっぴぴっぴぴっ
来ても来なくてもいい、その日の人の都合によって形を変える音が
静寂な空気を切り裂き飛び回っている。
「ふぁ〜あ」
世界一気の抜けた朝の挨拶を済ませ慣れた動作でスマホのアラームを止めた。
もちろん開けているのは片方の目だけでもう片方は夢の中。
そしてさらに慣れた動作で開けていた片方の目を閉じる。
この間わずか約3秒。
これがナウでヤングな
「いってきまーす」
ドアを開けた瞬間目に入るのは雲一つない快晴...ではなくよく見ると視界の隅に 雲がぽつりと青い空に穴を開けている。
ちょっと残念な気持ちになった高校生の行く先は言わずもがな高校
我らが英育学園である。入学式の際、校長が新入生へのスピーチで
「名前の由来は、英雄を育成する学校略して英育学園です。」
と自信満々にほざいていた。
「ほざいてるっていう見解であってるよな?」
悠斗はこの学校に入ってから数回目の同じ心配を終え最寄りの駅から電車に乗った。
乗った時点で座席は満席なので立つしかない。
自宅から学校までの距離はそこそこ遠く電車通学しなければならないため 家を出る時間は早い上に電車内でもみくちゃにされなければならない。
それでも都市部とは逆方向なのでぐちゃぐちゃにされることはないだろう。
「相変わらず冴えない顔してるな」
右隣から声が聞こえた。 この出会い頭失礼極まりない男の名前は
ちなみに小学校からの友達は別の高校になってしまった。なんでだよ。
「お前どうせ昨日も夜遅くまでゲームしてたんだろ?」
「よけいなお世話じゃ」
貴重な高校生活、優先順位を間違えてはいけない。人生<ラブコメである。
「まったく...3日目でこれなら彼女も愚か友達すらできないぞ。」
「僕あれだから、交友関係は狭くそして深くなタイプだから。ラブコメの主人公 大体そうだから。」
「じゃあ俺達将来結婚するじゃん。」
「お前も諦めてんのかい。」
そんな会話をしつつ駅についた。この駅は近辺では大きめの駅であり人の 乗り降りも激しい、座席に座れるかどうかは立つポジションが大切なのである。
できるだけドアとドアの間に立ちどの座席が空いても素早く座れるようにする。
この3日間学んだ中で一番有用だろう。少なくとも数学よりは。
電車のドアが空いた瞬間、目の前の席に座ってた人が立ち上がった。 今日は運が良いらしい。僕は素早く体を捻り着席の体勢をととええる。
その時右足に強い衝撃が走った。どうやら僕の右足に足を引っ掛けたらしい。
同じ制服を着た女の子が今にも転けそうになっている。 悠斗は咄嗟に右手を掴もうとするが空を切ってしまう。
「ちょっ」
「悠斗!?」
その勢いのまま女の子に覆いかぶさる形でたおれこんでしまった。
もっとも接触はしていない、四つん這いの状態でまたいでいるのである。
決して接触はしていないのだ。
周囲からの視線を背中に浴びながら、コケた女の子と目が合う。
その瞬間女の子の顔がみるみる赤くなっていった。
「...」 今まで2次元に生きてきた男にとって他人の容姿を褒める語彙などあるはずがない。
そんな悠斗でさえ思わずにいられなかった。
(プリティフェイスですやん)
その瞬間女の子は勢いよく立ち上がった。
「あちょっ...」
悠斗はギリギリで衝突を避けた。耳まで真っ赤にした女の子は何も喋らないまま そそくさと電車を出た。
その瞬間電車のドアが閉まる。電車が動き出すと同時に
未だ倒れている僕の方を向きながら桜太の口が開く。
「ラブコメかな?」
心配の一つのもしない友達に悠斗は言い返した。
「ほざいてるっていう見解であってるよな?」
ジト目の桜太が呆れながら言った
「...ニヤニヤしながら言っても説得力ないぞ」
ロスト〜記憶喪失少女を幼馴染にしてみた〜 じじゅゅ @jujuju619
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。ロスト〜記憶喪失少女を幼馴染にしてみた〜の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます