スピードひかえめのほうが好きだから、会社を辞めました

冒険者たちのぽかぽか酒場

第1話 会社のスピードに疑問を持って退職したら、柔道をきたえてもらいなさい。時間が、ぐるぐる…クセになりそう…

   (いみエモ話)

 意味がわかると、エモイ話。

 あなたは、この話の意味がわかりますか?

   ☆

 「スピードひかえめで、お願いします」

 ボクは、その言葉が好きだ。

 「自分らしいスピードで、ボクたち時間でやれば良い」

 が、社会ではその感覚が通じない。

 はげ茶瓶の部長が、言う。

 「新入社員の君?もっと、スピードを出してくれ!クライアントにも、迷惑がかかるだろう?」

 クライアントだかジャイアントだか知らないが、腹が立つ。

 そんなにもスピードを出したら、事故の元じゃないか。

 狂っている。

 気に入らない。

 だからボクは、言ってやったんだ。

 ボクは、言ってやったさ。

 「会社、辞めて良いっすか?」

 当然だ。

 今は、多くの人がこう言う。

 「入れた会社が、入ってみたら合わない?いやなら、辞めてしまえば良い」

 そうそう。

 いやな中でねばっても、メリットがあるとは思えない。

 帰宅して、じいじに話したら怒られた。

 「20歳にもなって、何を言っておる!背負い投げ、食らわすぞ!」

 じいじは、柔道の有段者で強い。

 さて、辞めてきた会社と家との間には、側道を持つ小さな公園がある。

 小学生時代、特にじいじと遊んだ場所だ。

 思い出がよみがえり、幻が見えてきた。

 いや、幻ではない。

 「…あれ?うちの、じいじか?」

 公園の中に置かれているベンチに、じいじが座っていた。

 鳩でも待っているのかと心配になり、公園からじいじを連れて帰ろうと決意。

 が、そこへ柄の悪そうな男たちが近付いてきた。

 「待たせたな、じいさん!」

 「きたか、待っておったぞ!」

 まずい。

 「じいじ、逃げろー!」

 やつらを目がけて走ったボクは、幸せに宙を舞った。

 スピードは、ひかえめが良い。


   (この話の意味)

 柄の悪そうな男たちが、じいじに言う。

「師匠!続きを、教えてください!」

 男たちは、じいじに柔道を教えてもらっていたようです。

 そこに乱入したボクは、彼らにとっては敵にしか見えなかったろう。

 「師匠、あぶない!」

 「わしにまかせろ、とうっ!」

 ボクを投げ飛ばしたのは、柄の悪そうな男たちではなくじいじ。

 頭を打つと、危険。

 心も、おかしくなっていくからね。

 目の前の景色がゆっくり回り、ボクは、ゆっくり萌えはじめた。

 「ああ…クセになりそう」

 エモいなあ。

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