動物の焼死体について
鬱ノ
動物の焼死体について
最近、私の実家が火事になりました。幸い両親は無事で、保険もきちんとしていたから大丈夫だと、連絡が来ました。それでもやはり心配は消えず、地元に暮らす女子校時代の友人に連絡を取りました。
「近所への延焼もなかったし、大きな心配はないよ。ただ、ちょっと変なことがあって…」
彼女は続けました。
「焼け跡から動物の焼死体が出てきたんだって。◯◯ちゃんの実家、ペット飼ってなかったよね?」
私たち家族はペットを飼ったことがありません。母がアレルギー持ちだからです。私は友人の話を聞いて、不意に子供の頃の不思議な記憶を思い出しました。
小学校低学年の頃の話です。冬のある日、いつものように学校から帰ってくると、2階から母親の声がしました。
「おかえり、ちょっと上がってきて。手伝って欲しいの」
母に返事を返し、階段を登っていると、突然動物のような匂いが鼻をつきました。おかしいな、ペットは飼っていないのに。足が止まり、急激な恐怖が私を包み込みました。さっきの声は母じゃなかった。それは、知らない男の声だったんです。どうして、私は母の声だと思ったんでしょう。その時、玄関の扉が開く音が聞こえました。
「ただいま。買い物の荷物が多くて、ちょっと手伝ってもらえる?」
母の声です。私はホッとして、階段を降り始めたのですが、再び足が止まりました。今の声も、知らない男の声だったような気がしてきたのです。私は階段の真ん中で動けなくなりました。
どれだけ時間が経ったのでしょう。誰の声も、物音もしません。静寂の中、ただ階段が冷たく感じられただけでした。その後のことは覚えていません。
それから数年後の話です。私は中学1年生でした。年末の大掃除の最中、階段の拭き掃除をしている時、ふとその出来事を思い出しました。私は、さり気なく母に話してみました。「夢でも見てたんじゃない」と、返ってくると思ったのです。しかし母は、下を向き床に雑巾をかけながら、期待とは違う返答をしました。
「どうして手伝ってくれなかったの」
母は冗談を言うような人ではありませんでした。私はその場で固まってしまいました。以降の会話は覚えていません。ただ、四つん這いで雑巾をかける母の姿が、一瞬、知らない動物のように見えたことだけは、はっきりと覚えています。
焼け跡から動物の焼死体が見つかったことを聞いて、なぜかこれらの記憶が鮮明に蘇ってきました。あの時の不思議な出来事と、今回の火事に何か関係があるのでしょうか。
(了)
動物の焼死体について 鬱ノ @utsuno_kaidan
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます