第4話:「親から自由になるという革命」

「親権の廃止……?」


副島さんが思わず口にした言葉が、会議室に重く響いた。


俺は頷く。


「まずは、“親が子どもを所有する”って発想を、制度から消さないといけない」


白いホワイトボードに太字で書いた。


親は、子どもの所有者じゃない。


それは、俺がこの党を作るきっかけになった原点だった。


俺の親は、いわゆる「普通の家庭」だった。


暴力はない。ネグレクトもない。


でも、何をするにも“親の許可”が必要だった。


「そんなことして、世間にどう見られると思ってるの」

「親の顔に泥を塗るな」

「家の名を汚すな」


気づけば、自分の言葉が出てこなくなった。


進路、交友関係、服装、SNSの投稿、考え方――

全部、親の「正しさ」に合わせて決められていた。


自分の意思なんて、最初から存在しなかった。


そんな人生を、生きたいと思うか?


「もちろん、いきなり親権ゼロは無理だ。だから段階的にいこう」


俺はホワイトボードに書き足す。


● ステップ1:16歳以上の子どもに「親権解除申請権」

● ステップ2:戸籍とは別に「個人ID制度」導入

● ステップ3:子どもの住居・進学・仕事に対する親の同意を不要にする


つばさが言った。


「あと、“育ててもらったんだから感謝しろ”っていう道徳、学校で刷り込まれてるのもヤバいよね」


副島さんがうなった。


「これは……“家族信仰”との全面戦争になるぞ。まさに革命だ」


俺は机を軽く叩いた。


「なら、そう書こう。これは、“親からの革命”だって」


数日後。


党の公式サイトに、ある新しい政策案がアップされた。


【親権自由化法案(草案)】

〜子どもが“自分の人生”を選ぶために〜


● 子どもには親から距離を取る自由がある

● 親の支配から解放された“個人”を、国が支援する

● 家族は血ではなく、信頼でつながる時代へ


公開された途端、SNSは騒然となった。


『これ、めちゃくちゃいい』

『親から逃げられる道があるってだけで涙出た』

『“育ててやった”って言われ続けてた。……誰か分かってくれてたんだな』


フォロワーが再び急増する。


その中に、たった一通だけ、手書きの手紙が届いた。


内容は、こうだった。


「私の息子も、宗一さんみたいに自由に生きてほしかった。

あの子は、親に従いすぎて、壊れてしまったから。どうか、他の子たちを助けてください。」


俺はその手紙を、胸ポケットにしまった。


そしてつぶやく。


「この戦い、絶対に負けられない」


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17歳、家制度を終わらせに国会へ行く メグルハ @meguruha

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