戦略より、そばにいたい ―光理、揺れる補佐線―

誰かを支えることは、時に、自分を見失うことでもある。

静ヶ丘学園で「最も理論的な参謀」と呼ばれる少女・光理。
冷静、合理的、非感情的──そう評価される彼女の原点には、
一度も届かなかった、姉への応援演説の記憶があった。

「正しい言葉を選べば、人の心に届く」
そう信じてきた彼女の前に現れたのは、
言葉は拙くても、心のままに語る少年──陣内颯太。

彼の演説は、論理に穴だらけで、まっすぐすぎて、恥ずかしくて、
……それでも、光理の胸の奥を揺らした。

補佐として、戦略家として、
“誰かの隣に立ち続ける”と決めたはずなのに。
気づけば彼女は──“そばにいたい”と思っていた。

これは、理性の裏側に揺れる、恋と言葉の物語。
誰かのために書いた言葉の中で、自分の気持ちを見つけていく少女の、
小さくて、確かな成長の記録。