ハッシュドポテト男と冷徹女
@tamagoarerugi
第1話
出会いはファストフード店
とある都会のファストフード店。ランチタイムでごった返す店内で、彼――通称「ハッシュドポテト男」――はいつものようにハッシュドポテトを頼んでいた。
ポテト愛が深すぎる彼は、毎日昼食をハッシュドポテトだけで済ませる男だった。
一方、彼女――「冷徹女」と噂される才色兼備なエリート弁護士――は、その日たまたま時間がなく、初めてこのファストフード店に立ち寄っていた。
カウンターに並んでいると、ハッシュドポテトを山積みに注文している彼に気づき、思わず眉をひそめた。
「信じられない。こんなに油っぽいものばかり頼むなんて……健康とか考えないのかしら?」
彼女は心の中でそう毒づいたが、彼は振り向いてニコリと笑いながら言った。
「健康なんて気にしないさ。人生、ポテトみたいにサクサク楽しまないと!」
その無邪気さとハッシュドポテトに対する異常な愛情に、彼女はなぜかほんの少しだけ興味を引かれた。
正反対の二人
彼は陽気で楽天的。仕事はフリーランスのイラストレーターで、日々の生活に執着せず、「好きなものだけを食べ、好きなことだけをする」を信条としていた。
彼女は冷静で現実主義。常に計画的で、無駄を嫌い、感情に流されることを極力避けるタイプだった。
そんな二人が再会したのは、彼が偶然彼女の弁護士事務所に迷い込んだ時だった。
「ここって、カフェじゃないんですか?」と無邪気に笑う彼に、彼女は心底呆れながらも、どこか懐かしさを感じた。
その後、彼は彼女に会うたびハッシュドポテトを差し入れるようになった。
「これ、食べてみてくださいよ。意外とおいしいですよ?」
彼女は最初こそ断っていたものの、仕事が終わらない深夜にふと食べてみると、その香ばしさと程よい塩気に思わず心がほぐれた。
氷が溶ける瞬間
ある日、彼女が巻き込まれた仕事のトラブルで精神的に疲弊していた時、彼は突然彼女の事務所に現れた。
「これ、特製ハッシュドポテトです!」
それは、彼が自宅で作った手作りのポテトだった。揚げたてで、ほんのりバターの香りが漂う。
「こんなものに慰められると思う?」と冷たく言い放つ彼女に、彼は少し寂しそうな笑みを浮かべた。
「まあ、食べなくてもいいですよ。でも、いつでもサクサク楽しい気分になりたい時のために置いといてください。」
その一言に、彼女は何かが変わるのを感じた。彼の無邪気さや優しさに触れるたび、自分の冷徹さが少しずつ溶かされていくようだった。
ポテトと未来
彼女は次第に彼との時間を楽しむようになり、仕事帰りにハッシュドポテトを一緒に食べる日々が増えていった。
「人生って、本当にポテトみたいね。」
「え、どういうことです?」
「外はカリカリだけど、中はほっこりしてる。あなたもそう。」
彼は満面の笑みで言った。
「だったら、君はクールなマヨネーズかな。冷たいけど、ポテトにピッタリ!」
こうして、ハッシュドポテト男と冷徹女の物語は続いていく――彼女の氷のような心を少しずつ溶かしながら。
ハッシュドポテト男と冷徹女 @tamagoarerugi
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