誰がために竜は鳴く

スペインのとある村に住む少年ヤンは、ちびっこで、孤児で、モリスコの末裔だった。改宗を強いられたムーア人の血を引く彼は、村の子供たちから「ちびっこムーア」とからかわれ、心に深い孤独を抱えていた。両親が遺した古びた診療所に一人で住む彼の唯一の話し相手は、足の悪い吟遊詩人の女性だった。

彼女から語られる物語には、かつて邪竜と戦い、人と契約を交わした「魔法の竜プカプ」が登場する。プカプは今も麦穂の海岸で新たな聖騎士を待っているという。ヤンはその物語に心を動かされ、「僕がその騎士になる」と旅立ちを決意する。

パンと干し肉、ナイフとカンテラを手に、ヤンは満月の夜、村を出た。旅の途中、差別や危険に直面しながらも、彼は同じモリスコの血を引く人々と出会い、励まされ、旅を続けていく。狼の吠えるラ・マンチャ…続きを読む