第12話 説得と戦争の下準備。
ベレンスト共和国は他種族を差別しない国、たとえゴブリンでも理解力があり、会話が可能で適応力、国の意向に従い法を守れるのであれば暮らせる国、そんな数少ない国である。
大変珍しい国家。
しかしゴブリンは人類種からは受け入れがたく嫌われている。
人並みの知識を持ち、意思疎通ができるモンスターは少数ではあるがいるのだ。
そんな国では上から下へと大騒ぎ。
ハウラー帝国に無理矢理嫁がされた、姫、元王女が戻ってきたのだから。
ベレンスト女王に召還され、謁見が叶う、しかし他の貴族らは良く思っていないようで、その視線は蔑みに近いものだった。
中には敵意を向ける者も少なくなく、余りよろしくな様相を見せていた。
シノ「召還に応じ、まかり越しましてにございます、ベレンスト王女アレナ様を無事発見することが出来、無事送り届けることが出来まして、私としましては感無量にございます。」
ベレンスト女王「うむ此度の件、大変感謝している、しかし見ての通り、貴族共にとっては吉報とはいいがたい、なぁ貴様ら。」
視線を貴族たちに向ける女王、半分以上の貴族は視線を逸らす、そう面白くないとばかりに、宰相までもが視線をそらしている、だがまっすぐ視線を向けている、少数の貴族と大臣だけは姫の帰還をたいそう喜んでいた。
女王「こうなっているのは、国境の直ぐそこまでハウラー帝国が迫っているからだ。
そして我が娘とミキハラ殿が所有する、奴隷達の返還を要求しているからだ。
戦争の火種を抱えている状況、貴族にとって面白くないのだろう仕方ない事ではあるが、私は戦うつもりだ、負けると分かっていてもな。」
宰相「しかし戦えば確実に負けますぞ!支配を受けいれれば生き残れます、私とて娘を差し出すのは心苦しいですが・・・。」
貴族たちからは、苦々しい顔が見て取れる、しかし死にたくないと言う気持ちが強いのだろう。
女王「一矢報いようとする者もいる、だがお前たちは臆病すぎるぞ、親が子を思うならなぜ立ちあがらん!情けないわ!。
だがよくぞ帰ってきてくれたアレナよ、本当によく無事で帰ってきてくれた、私の可愛い娘よ。」
アレナ「母様、アレナはシノミキハラ様のお陰で無事帰ることが出来ました。
奴隷の扱いに絶望していた所、シノ様は体当たりで奴隷の扱いを改善してくださったばかりか、他国の王妃や姫様達も、更には他の奴隷達まで死の淵から救われました。
教養における勉学、戦闘訓練、私生活の改善まで、あらゆる意味で人として扱い、生きる希望を与えてくれたのです。
私たちが知らぬ知識まで与えてくださいました。
この戦争は勝てます!?シノ様が居れば確実に勝てると言い切れます!、だからどうか・・・・。
シノ「待って、発言の許可を。」
女王「許可する。」
シノ「失礼ながら、私の問いに答えていただきます、問答するつもりはありません、率直に言います、勝ちたいですか?。」
女王「防衛でもなく、押し返すでなく、勝つとなそれは夢物語の話ではないのか、数はハウラーが圧倒的なのだぞ、それでも勝利するとな?。」
貴族達「無理に決まってるだろうが!敵は200万もおるのだ、それを覆す方法など・・・息子や娘を・・・大切に思わない親などいる筈無かろうが!?・・・。」
貴族の一部は膝から崩れ落ちる、涙する者も少なくない。
宰相「・・・策がおありなのでしょうか?勝利する策が。」
シノ「普通にあるわよ?単純じゃない?併呑された国民が、自国の王妃が王女の姫が、生きていて扇動したらどうなるかしら?そして戦う覚悟が出来ていて、それも相当強くなって勇猛果敢に戦う姿を見たら、元国民はどう思うかしら~?。
200万?あはは、併呑されて酷使された国民はどう思う?私なら離反するわ、憎っくき帝国に牙をむくわね。
200万の中には併呑された国民や兵士がいる筈よ、貴方達貴族はどう思う?、どうするのかしら?。」
宰相「不敬であるぞ!?そんな事起こるわけがないではないか!あるはずがない!。」
シノ「帝国と同じ兵器、又はさらに帝国より優れる兵器の図面があるとしたら?どうかな?、例えばコレ、バリスタ、カタパルト、投石器、更に私はクロスボウガンと呼んでいるのだけど飛距離は大体250メートル、コンパウンドボウは300メートル、砦の城壁から打てばボウガンは500メートル、コンパウンドボウは700メートル以上は届く武器よ。
とある物を付けて撃てば50メートル範囲爆発し吹き飛ぶわね。
ついでに私が所有するマジックアイテムを使えば、圧勝するわね~。
マジックアイテムはあくまでも貸し出すだけだけどね、私の許可がないと使えないからね?。
大臣さんこれ図面、見てみるといいわ、宰相さんも見る?武器の提供は私がするわ、後で返してもらうけど。」
女王「私にも見せて貰えないか?それらがあれば必ず勝てるのだな?。」
シノは図面を渡し確認してもらう、最初に声を上げたのは大臣だった。
この世界にカタパルトや攻城兵器はほぼない、化学技術が発達していないのも要因となっている。
何故かと問われれば、魔法や魔道具がある程度あるから、しかし基本冒険者が所持しており、表に出さないからであり、所持している者も少ないのが原因の一つとなっていた。
魔法の飛距離はいい所300メートル程度。
大魔法を使うには数十人必要な上、詠唱に時間がかかり過ぎる、結果たった1発にかかる時間は30分も掛かるのだ。
そのたった一発では、人は殺せても砦は半壊程度、非常に微妙な大魔法なのだ。
大臣「・・・・・・こ、これは!?素晴らしいですぞ!これさえあれば、帝国の兵器など恐れる必要はありますまい!?
宰相「むむむむ・・・・確かにこれならば、勝てる見込みはありますな、亡国の王妃や姫が呼びかけ、兵器の威力を見せつければ或いは・・・勝てるかもしれませんぞ。」
女王「これは凄いものだな、私は負けて蹂躙されるならば、命を絶つつもりであった、だがこれなら勝てる!ミキハラ殿この図面は頂いても良いのだな?貸し出す武器は諦めるが、この図面の兵器は世の世界を根本から変えてしまう代物である。」
シノ「あら?図面を上げる訳にはいかないわ、現物を私が貸し出すだけよ?、そういった武器がありますよと見せただけよ。
そこにある図面の兵器を貸すだけ。
上げる訳にはいかない。
城の広い場所でお見せするわ、それで納得いただけるならば、力を貸します、
後は見て学んで、模倣するなりしてもらえれば、勝手に作っても文句は言わないわ。
図面は回収させてもらうわね、後は広い場所まで案内してもらえるかな。」
女王「そうか・・・・・仕方ない、戦争に手を貸して貰うのだ、図面は返すしかないだろう。
大臣、宰相図面をミキハラ殿に返すのだ、直ぐに訓練場に向かうぞ!。」
大臣と宰相はじっくり図面を見た後、渋々図面をシノに返すのであった。
そして訓練場でシノは兵器の数々を披露する。
それを見た女王、大臣、宰相、王女、貴族、兵士達は驚愕し言葉を失う。
アレナ「なんて恐ろしい兵器の数々、これではなぶり殺しと変わらないではないですか。」
シノ「戦争とはそんな物よ、この時代勝てば官軍、負ければ奴隷か慰み者よ?、アレナ王女は経験したでしょう、あの帝国の歪んだ行い、悍ましい者達に、苦しめられた日々を覚えているでしょう。
これは貴方達の復讐よ、戦争を引き起こした馬鹿共に思い知らせる為の戦いなのよ。」
女王「この魔道銃は2キロメートル先まで飛ぶとは恐ろしい武器だわ、はっはっはっ、コレならば勝てる、勝てるぞ!。」
宰相「間違いありませんな、フフフ、使い方を今すぐ兵士達に、是非ご教授願いたい。」
大臣「血が滾りますな~、併呑された国も取り戻せそうだ、帝国の国境まで戦線を下がらせ、他国と連携すれば勝利出来ましょうぞ!?。」
シノ「出来ればそのまま滅ぼしてくれると有り難いけど、帝国の皇帝とそれに連なる人達は、私の手で。
それが手を貸す絶対の条件よ。」
女王「・・・それは・・・なぜなのか?。」
シノ「私の父と母の仇だからよ、詳しい話は限られた人にしかできないわ、そして誰にも話してはならない、その約束を守って貰います。」
アレナ「それは?一体。」
女王「わかった、私の私室にて話そう、大臣と宰相の同席は構わないだろうか?出来るなら隊長の近衛兵の3人、それが最大で出来る譲歩となってしまう事を許してくれまいか。」
シノ「ええ構わないわ、でも約束が破られた時は、全ての兵器と魔道具は没収となるわ。」
ゴクリと息を飲む、シノから放たれる殺気は恐ろしい物だった。
その瞳が、本当に行われると思わせる。
私室に入ると、早速話し合いになる。
女王「して、その内容を聞かせて貰えるのだな、此処にいる者達は絶対に他言してはならない、我が国、ひいては他国にも知られてはならぬ、よいな 。」
全員「御意」
シノ「衝撃的な話をするけど、覚悟してね・・・・私は9年前に今の帝国の現皇帝に、前皇帝だった両親を暗殺された、そして私も同じく暗殺者によって殺された筈だった、この意味は分かるわよね、私は召喚士よ、だから殺されたの。」
皆一様に驚愕の表情だ、当然死んだと思われた人物が、五体満足で生きていたのだから、それも恐るべき知識と幻の召喚士であると、だからこそ現皇帝に殺された。
大臣「まさか・・・貴女様は・・・そうでしたか。」
宰相「シーノ・ミキ・ハウラー王女・・・何故無事に生きておられたのか?。」
近衛達「召喚士様。」
シノ「私は死ななかったのは、ある存在から二つの加護を、得たお陰で生き延びた、このように腕を切り落としても。」
腕を切り落とす、切り落とされた腕は血が噴き出す、周りが慌てるが、直ぐ様腕が浮き上がりシノにくっ付いてしまう。
またもや驚きを隠せず動揺してしまう。
シノ「この様に腕を切られても、首を切られても死なないわ、死ねないのよ、だからこそ生き残れた、成長は止まってるわね。
レベルは上がるみたいだけどね。
だから私の手で引導を渡すのよ、その野望と確実に命を打ち砕く為の復讐よ。」
女王「なるほど、確かにそれならば納得できる、自らの手で清算すると言う訳なのだな、まさかの現皇帝もシーノ王女が生きているといは思うまい。
これほど愉快なことはない、我らも全力を尽くそうぞ!併呑された王妃、王女、そして帝国の元王女で召喚士となれば、これほど心強い旗頭はなかろう。
併呑された者達も立ち上がれば、大戦力となるだろうの。」
シノ「くれぐれも他言しないようにお願いするわ、それと兵器や魔道具を渡し、国境付近の帝国を押し返したら、一旦ここを離れるわ。
戦争にはまだ私は参加できない事情があるのよ。
あの空のモンスターを討伐なきゃならない、アレを討伐してからじゃないと皇帝に復讐できないのよ。
あのモンスターは皇帝とそれに連なる者達の魂を打ち砕く、そして2度と復活できないようにする必要があるのよ。」
宰相「ふむ、復活するギフトですかな?それであのモンスターが必要なのですな。」
大臣「禍根は立つべしと、これは召喚士であるシーノ王女しかできそうにありませんな。」
アレナ「また復活する、恐ろしい、復活すればまたおなじ事が繰り返されるのですね?、それは確かにシーノ様にしかできそうにありませんわね。」
シノ「私が召喚士である事も最後まで他言無用です。」
女王「宰相、大臣、近衛達よ全員に通達せよ、皇帝と血のつながる者は殺すさず、必ず捕らえよと、奴隷の首輪を嵌め抵抗できぬように、牢に送れ拷問は許さぬ、最後の一手シーノ王女が行う!良いな!?。」
全員「ははっ!?。」
こうして戦争の準備が着々と進められる、密偵もあぶり出され、静かに夜を徹して行われる、兵士や貴族最前線を、大臣宰相は裏方、ベレンスト女王と、亡国の王妃王女が旗頭として戦線に参加する。
約一週間シノの血の滲むスパルタ訓練に耐えた、シノから教わる日本式の自衛隊訓練は、生き地獄に近い物だった。
ハンドサインから隠密方法、言葉を発さぬ手際のよい動き、拘束方法、捕虜の扱い、略奪を行わない。
立場がだれであれ仲間内だろうと傲慢な者は叩き伏せられることを学び、正しいあり方を学ばせ、自然を使ったブッシュクラフト、トラップ等に至るまで、それを1週間で詰め込んだ。
1週間で屈強な戦士達が誕生した。
付け焼刃かもしれないが、それでも有り余る実りある地獄の訓練だったと後に語る、そしてそれは後世に脈々と受け継がれるのだった。
シノから渡された武具、マジックアイテム、そして攻城兵器、手榴弾やダイナマイト、フラッシュグレネード、スタングレネード等。
帝国は知らない、どれ程恐ろしい相手を怒らせたのかを。
そして思い知る侵略戦争などするのでは無かったと後悔することになる。
シノよ、これは圧倒的ではないのか?。シノ「え?まだ安心できないんだけど?こちらに犠牲者なしで完勝するつもりだし。」
モンスターハウス召喚、でも呼べるのは倒したモンスターだけ。 保護猫さんと一緒 @razurokku
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