一夜の過ち
𝐿𝑢𝑐𝑦
一夜の過ち
私はコートのボタンをひとつ掛け違えたみたいに
何かを少しずつ ずらしてしまったんだね
あの夜 薄く冷たいあなたの部屋で
差し出された赤ワインを手にしたまま
美味しいのかどうか 考えるのも忘れて
ただ ただ 小さくうなずいた瞬間から
あなたは優しかった
それはきっと 本当のことで
それはたぶん 愛と呼ばれるもの
私はきっと 愛されたんだと思った
でも 違ったんだね
あの夜がなかったら
あの夜に首を振らなければ
あの夜にあなたの体温に寄りかからなければ
そうしたら 私は
毎朝 あなたのコーヒーを淹れる人にはならなかった
洗濯物を畳みながら ため息をつく人にはならなかった
あなたのそばで 愛されてないと気づく人にはならなかった
あなたの妻にはならなかった
一夜の過ちとは
過ぎてしまった 一度きりの出来事ではなく
ずっと続いていく 間違いの始まりなのだと
今ならわかる
一夜の過ち 𝐿𝑢𝑐𝑦 @rax_lycia_0343
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