記録

──記録の島・中央広場。


石畳が砕け、神の使徒が宙に浮かぶ。

背中には羽のような光の翼。両手には、双剣のごとく形成された光の律剣エイギアス

「貴様らに、慈悲はない。光に従わぬ者は、闇に堕ちるのみ」

使徒の声が冷たく響くたび、空気が震え、空が再び閉ざされる。

「なら、僕たちはその“闇”の中ででも、道を見つけてみせる!」

さとるの身体から、濃密な影が噴き上がった。

その影は形を変え、まるで鎧のように彼を包み込む。

影装・第一段階──黒鎧こくがい発動

「へえ……やっとその力、思い出したってわけか」

レオンが不敵に笑うと、周囲の大気がうねる。

彼の体内から迸る炎が、剣にまとわりつくように現れた。

「こっちも行くぞ──《焔剣術・煌焔》!」

二人が同時に地を蹴った瞬間、空気が爆ぜ、雷のような轟音が鳴り響く。

「無駄だ」

使徒が光の双剣を振るうと、無数の光の刃が空間を裂くように飛び出した。

「っ──速い!」

「でも……!」

さとるの影が動く。まるで意志を持つ生き物のように彼を包み、光の刃を“飲み込んだ”。

「なに……!? 光を、喰っただと!?」

使徒の顔に、初めて焦りの色が浮かぶ。

「影は、光がなければ生まれない。つまり……お前の力がある限り、僕の影も強くなるってことさ」

さとるの影が伸び、使徒の足元を絡め取る。

「レオン!」

「任せとけ!」

レオンの剣が、真っ直ぐに閃光を切り裂いた。

轟音と共に、使徒の片翼が吹き飛ぶ。

「ぐ……っ、貴様らごときが……!」

使徒が浮かび上がり、全身から放つ光が強烈な球体となって収束していく。

「これは……!」

「最終攻撃か。来るぞ、さとる!」

「──でも、もう怖くない」

さとるが静かに目を閉じる。影が彼の背後で大きく広がり、無数の形を成す。

「僕は影。レオンは光。だったら──」

「二つを重ねる!」

二人の力が融合する。

影と炎が交じり合い、巨大な剣となって天に伸びる。

影光剣・創閃エクリシア──発動。

「これが……僕たちの、答えだあああああっ!!」

閃光がすべてを貫いた。

光も、影も、そして空すらも──一瞬のうちに、沈黙する。

──記録の島に、静寂が戻った。

瓦礫の中、立ち尽くすさとるとレオン。

使徒は消え、空には穏やかな風が吹いていた。

「……勝った、のか?」


長らくお待たせしました。私情で遅れてしまいすいませんでした。これからも読んでくださると幸いです。                 ——たまご

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転生したら物理的に「影」でした ~神界編~ たまご @eggutamago24

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