脱お利口さん文芸家になれ!

隅田 天美

貴方の本当に書きたいものは何ですか? なりたいものは何ですか?

 小学生のころから今まで(今年四十六歳になります)『小説家になろう』ブームは何度もあった。


 以前書いている手前、色々な人から「これ、読んで」と言われることも多かった。


 まあ、長く続いた人はほぼいない。


 仕事や就職、進学などを理由に筆を折る人が多かった。


 私自身、ワープロなどの機器が無かったらどうなっていたか分からない。



 今、角川書店のカクヨムをはじめ各出版社がSNSを使った小説交流サイトを使ったメディアミックスを展開している。


 薬屋の独り言や幼女戦記が最たるものだ。



 かつて、原稿用紙に万年筆やボールペンで机で書いていた文芸は現在、パソコンやスマートフォンを使えばだれでも簡単に書ける。


 もっと言えば、AIが勝手に自動生成してくれる。



 だが、あえて、長年書いている人間として(まあ、アマチュアなんですけど)ひとこと言わせてほしい。


「みんな、いい子でお利口さん」



 これ、誉め言葉ではない。


 むしろ、危機感を持っている。



 私は特に『ざまぁ系』などが危ないと思っている。


 何故か?


 端的に書くと『二匹目のどじょう』を狙っても、そこに獲物がいるとは限らないからだ。


 なのに、売れた作品の模倣のなんと多いこと。


 それに加えて自己承認のお化けのような何の苦労も相手への尊厳もなく美女が何故か懐くという意味不明で読者に何を訴えたいのかよく分からない、しいて推測するのなら「不運な自分を慰めるだけの」小説の多さよ。



 確かに今のライトノベルを買う中高年層は俗に『就職氷河期』と呼ばれる時代から見捨てられた世代であるから、同情の余地はある。


 だから、世間から認められて褒められたいから「いい子」で「お利口さん」な小説を書く。



 でも、私も同じ世代だが、それはもったいないし、小説や文芸でなくても、世間から認められるのならユーチューバーなりVチューバーになったほうがよほど楽だ。



 小説や文芸は、一つしかない人生で複数の人生を感じたり想像できる。


 だから、書く。


 AIは確かに賢いし、参考にはなる。


 でも、お利口さん過ぎて、予想外のことができない。



 物事の進化は規格外から始まる。



 だから、どうか、文芸を志す人たちよ。


 アンチいい子であり、お利口さんなんて蹴っ飛ばして自分の心と向き合ってほしい。

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脱お利口さん文芸家になれ! 隅田 天美 @sumida-amami

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