実家での戦い

さすらう

第1話

 大学2年の春休み、私は、長期で実家に帰ることにした。

 実家に帰る前に、母から電話で、家にネズミが出て、うるさいという報告を受けていた。

 先祖代々受け継いだ、木造2階建ての家で、リフォームしてからも25年は経っている。そのため、その話を聞き、驚きはしなかった。

 しかし、実際、実家で暮らしていると夜中にガタガタと音を鳴らし、何かをかじる音がする。眠りかけている時に音がすると目が覚める。許せなかった。 

 私は、このネズミを追い出すと決心した。祖父に頼み、ネズミの駆除業者を呼ぼうとしたが、依頼料が高すぎる。結局自分たちでなんとかするしかない。ここから5日間の戦いが始まる。ネズミを仕留める戦いだ。

 1日目、まずは音だ。ネットで調べてみると、ネズミには嫌がる音があるらしい。それらしい音を出す動画があったので、それを流してみる。少し静かになった気がする。しかし、1時間ちょっとすると、また、うるさくなる。猫の鳴きマネをして追い出そうともしたが効果はなかった。

 2日目、次はホームセンターで、ネズミが嫌がる匂いを放つ駆除グッズを買ってきた。屋根裏に置いておくと、1ヶ月は効果があるらしい。出費を抑えたいため、多くの駆除グッズを買わなかったが、念のため、ネズミの嫌がる匂いのスプレーも2本ほど買った。この日は、スプレーを撒き、駆除グッズを設置して終わった。すると、夜になっても屋根裏から音がしない。完全な勝利だ。 

 3日目、この日の夜も、音はしない。もう安心だ。

 4日目、この日も夜になっても音がしない。今日もよく眠れる。しかし、深夜1時頃、以前と同じように音が鳴った。心なしか、以前より音が大きい。音を鳴らしても、壁を叩いても音は止まらない。

 5日目、今日はネズミ捕り器と毒エサを買ってきた。それらを屋根裏に設置した。ネズミが、この毒エサを食べると、目が見えなくなり、光のある外に出るという仕組みらしい。なので屋根裏に死体は残らないだろう。 

結局、その日の夜も昨日同様うるさかった。

 6日目の夜、音が一切しない。毒エサが効いたのだろうか。それとも、ネズミ捕り器に入ったのだろうか。

 この日以降、音がする日はなかった。私は勝ったと思った。

 そういえば、屋根裏にネズミ捕り器を、仕掛けていた。そのままにしておくのもダメなので、覚えているうちに、撤去することにした。屋根裏は暗いし、ホコリが多いので正直嫌いである。だが、もしネズミがネズミ捕り器に入っていたら、腐敗してしまい、ウジ虫が湧いてくるだろう。その前に片付けないといけない。

 懐中電灯で照らしながら、屋根裏を見て回る。歩ける広さじゃないため、匍匐前進で進む。ネズミ捕り器に何か入っている。ネズミだろうか。いや違う、小さなたぬきのような動物だ。しかし、たぬきではない、手足が10本程度ついているのだ。化け物だ。それに周りを照らしてみると、蜘蛛が大量にいる。その蜘蛛の体をよく見ると、人の顔のような模様である。気味が悪い。私は何と戦っていたのだろう。そんな恐怖を感じていると、背中に違和感を感じた。蜘蛛が背中を上ってきている。

 この戦いは、私の負けだ。

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