エピローグ

 箕島は弁護士を通じて桝野に「いつまででも待ってる」と伝えた。

 いくら真実を供述したところで、桝野が人を刺したという事実は消えない。それなりの償いをしなくてはならないだろう。それでも箕島は待つと決めた。

 それに待ってるのは箕島だけではない。桝野の勤め先の東堂も戻ってくるのを待つと言ってくれていた。桝野の隣に住む青年はニュースを見て滝本のもとに駆け込んできたという。

「桝野はもっと周りに目を向けたほうがいい。自分一人で抱え込み過ぎだ」

 久しぶりに連絡をとった滝本はそう言って苦笑していた。


 箕島は刑事第二課暴力犯係への異動願を提出した。受け取った鈴木は珍しく眉間に皺を寄せた。

「だから滝本と一緒に仕事させるのは嫌だったんだよねえ」そう言って長いため息をついた。

 滝本と一緒に仕事をすることは叶わなかったが、箕島はいま刑事第二課暴力犯係に所属している。

 桝野のことを時折思い出す。

 きちんと罪を償ったら桝野と会って話がしたい。事件のことなんてどうでもいい。もう一度、空を見上げながら桝野とくだらない話がしたい。


「──箕島、ぐずぐずするな。行くぞ」

 そう先輩から声がかかる。箕島は急いで上着を手に取り駆けて行った。

                                    


〈了〉

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追憶 柚木ハッカ @yuzu_hakka

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