第55話 一層突破
サメだけあってスピードはかなりのものだ。正確にはサメの魔物だがな。
人間の体重をものともせず、常に安定した泳ぎを見せていた。
魅了によって張り切っているのか、風を切るように青い空間を渡っていく。
「さながらジェットコースターだぁ! 行け行けー」
リリは手をグーにして前に突き出しながら楽しそうにサメによる移動を堪能している。
まぁ乗り心地は悪くはない。
魔物に乗って移動ってのも奇妙な話だな。普段はただただぶっ倒す対象だからな。
そうしてサメの背中に乗って数分。
広大な湖をそのスピードで一気に泳ぎ切り、あっという間に陸地へと行き着いた。
スピードを落とし、体を横にしてサメは陸に接岸する。
2人でサメから飛び降り、陸地へと着地。
「サメりんさよならー。おとといきやがれー」
そのまま踵を返して向こうへ去っていくサメに手を振るリリ。
意図的に魅了を解けばまた襲いかかってくるみたいだが、今みたいに魅力したまま野に返すことも出来るらしい。
と言っても無数の魔物がいるダンジョンでそんなことしてもあんまり意味はないって話だけどな。
てか、それなら魅了を解いてもらって普通にぶっ倒せば良かったな。
ミスったな……
「さて、抜け穴があるよ」
気を取り直して到着地点に向き直る。
目の前にデカデカと立ちはだかる岩壁に開く一つの穴。
周りを見渡してみるが、ここが先へ進むための唯一の道みたいだ。
近づいてみるとその穴の小ささに気づく。
背丈が小さく、俺は屈まなければ通ることが出来ない。リリなら問題なく通れるだろうが。
このダンジョンはいちいち進行が面倒くせぇ仕組みになってやがるな。
仕方がなく身を屈めながら穴へと入っていく。
「狭いところに2人……ねぇねぇ、ドキドキする?」
「ドキドキだ? 魔物がいつ出てきてくれるかってワクワクはあるが」
「うわぁ……キモ〜」
引いたような反応だが別になんと思われようと知ったこっちゃないな。
時折り飛んでくるコウモリの魔物を処理しながら一本道の穴を歩いていくと、やがて少し輝きを増した空間へと出た。
「あ、はっけーん」
「よし」
ここがこの階層のゴールらしいな。
丸い部屋に一つ、降りの螺旋を巻いた階段が見える。
「ようやく2層か」
「まだ楽勝だね〜」
リリ曰く、ここまでの魔物は全てB級。
まだA級の魔物は出てきてねぇが、恐らくこの先で出てきてくれるだろう。
ここがまだチュートリアルであることを祈るぜ。もっと強い魔物を期待したいもんだ。
心躍らせながら俺は2階に進む階段へと駆けて行った。
◇
「ふーん、まだ全然かからないかぁ」
滅也おにーさんが足早に2層に向かおうとしている姿を後ろから見ながらリリは呟く。
様子に変化なし。
出会った時から変わらず、リリにあまり興味を示していない。強さには興味あるかもだけど。
さっきまでのリリの問いかけに対しても好意を滲み出させることはなかった。
ずぅっと戦闘にくびったけ。
「そっかぁ……」
流石に強いだけあるねぇ。
桐島才人を圧倒的な力で下した人物。その力は伊達じゃないってことだぁ。
そういえば昔出会ったあのS級探索者への効きも結構悪かったもんね〜
ま、今となっては完全に堕ちたけど。
「時間の問題だよ、あはは」
思わず笑みが溢れる。
今、滅也おにーさんの心はひたすらに戦闘へと捧げられている。
猪突猛進というかなんというか、馬鹿だなぁって笑っちゃうくらいの戦闘狂ぶりだ。
この態度がいつ変わるのだと思うと……ねぇ……あは。
「おい、何してるんだ? 早く来い」
「はいはい、がっつきすぎー。きもーい」
「あ?」
滅也おにーさんの呼び掛けに応えてリリも少し駆け足で向かう。
これからの期待の高まりを表すかのように足は軽やかに動いていく。
あははははは。
楽しみだね、滅也おにーさん?
―――――
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戦闘狂でF級探索者の俺が、ダンジョン配信者を助けて世間から注目を浴びてるらしいが気にせずマイペースに行くとしよう 〜だから実力を疑われても俺は知らん。で、なぜ幼馴染と助けた配信者は俺に寄ってくるんだ〜 ヴァレスティ @Nibelung
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