第54話 リリのスキル
スライムを倒した俺達は先に進むことにした。
それからの道は洞窟の迷路のように入り組んだ構造で、場所によって水滴の量が変動。
中には壁をつたって水が流れている箇所もあった。
水が流れているためか周りはひんやりしており、岩と水の匂いがふわりと漂う。
道中度々スライムが落ちてくるが、特に気にすることもなく倒して進む。
「スライムの雨みたい〜」
「数が結構多いな」
「上級者専用ダンジョンだねっ! みなみおねーさんが来てたら大変だったかも〜」
確かにな。まぁどっちでも良い話だ。
進むにつれて水の量は更に増えていく。
時たま床にも水溜りが形成され始めてきた。
そして入り組んだ道を抜けた時……
「湖か?」
「海みたい〜」
――目の前に広がっていたのは広々とした水面。
まるで湖を思わせる、どこまで続いてるか先が見通せない程の大きさのものだ。
ある地点を境に地面が消失し、全て湖と化してしまっている。
抜け道なども存在せずこの湖を渡らなければこの先進むことができないようだ。
「泳がなきゃいけねぇじゃねえか。めんどくせぇな」
「ぷぷっ、だから滅也おにーさんは頭よわよわなんだよ」
手を口に当てて、吹き出すように笑うリリ。
楽しそうな表情で俺が泳いで突破しようと口に出したことについて笑っていた。
その顔には余裕が見て取れる。
「あ? 何か良い方法があるのか?」
「ふっふーん、あるんだよ。とっておきのがね〜」
――ザップーン!
その瞬間、湖の中から大きなサメのような魔物が飛び出す。
普通のサメと比較しても恐らく巨大で、歯が全て露出して獰猛な雰囲気を受ける。
もちろん初めて見る魔物だ。
「B級のフューリーシャークだぁ。ちょうど良いじゃん」
「ちょうど良い?」
「『
リリがそう言った瞬間、ピンク色の渦巻く波動がサメに放たれる。
――それを受けたサメは動きをピタッと止め、その後表情を柔らかくしてふよふよとリリの方まで近寄ってきた。
獰猛な雰囲気は霧散しており、リリのことをじっと見つめている。
「……スキルか?」
「あったりー。私のスキル、『誘惑』。魔物を自由自在に操る能力だよー」
なるほど、それなら納得がいく。
S級探索者ってのはどいつもこいつも変な能力を持ってるもんだな。
「強い魔物には効くまでに時間がかかるけど、B級程度の魔物ならこの通り」
リリがサメの頭を撫でても嫌な顔せずに受け入れる。
まるでペットみたいな反応だ。
「このサメは気性が荒くて、陸にまで飛び出して探索者を喰らう危ない魔物だけど、私のスキルにかかればイチコロだぁ〜」
「これに乗るってことか」
「そうそう、頭プールの滅也おにーさんもそのくらいは分かるんだね〜」
「頭プールってなんだよ」
相変わらずよく分からん言葉を使う奴だな。
それはともかくリリの言葉に従い、背を向けたサメの上に乗る。
「よしっ、サメりん! レッツゴー」
広大な水をサメに乗って渡って行った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます