羽のない翼

sui

羽のない翼



少女は小さな村で生まれた。

広い世界を夢見ながらも、村を出ることは許されなかった。


「ここで暮らすのが一番幸せなんだよ」


大人たちはそう言った。

けれど、少女は知っていた。


——この空の向こうには、まだ見ぬ世界が広がっている。


丘の上から見下ろす景色は美しく、どこまでも続いているように思えた。

でも、少女には「羽」がなかった。

空を飛ぶことも、自由に旅立つこともできなかった。


それでも彼女は、夢を諦めなかった。


村にあるすべての本を読み、旅人の話に耳を傾けた。

知らない言葉を覚え、手紙を書き、外の世界とつながろうとした。


そしてある日、彼女は気づく。


「——私はもう、ここにいながら遠くへ飛んでいるのかもしれない」


言葉は翼になる。

想いは風に乗る。


身体はここにあっても、心はどこへだって行けるのだ。


やがて少女は、大人になった。

村を飛び出すことはなかったが、彼女の言葉は遠くへ届き、多くの人の心を動かした。


「羽がなくても、飛ぶことはできる。

それは、夢見る心が翼になるから。」

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羽のない翼 sui @uni003

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