第6話「神代啓示と鶴のひと声」
「もらった」
神代啓示は深く息を吸い込み、「谺」の柄と白鞘をしっかりと握りしめて、一歩踏み込んだ。しかし、次の瞬間、彼の体に違和感が走った。確信は持てなかったが、長年の経験からくる直感が警告を発していた。直ちに、神代は力を込めて横に転がり、何とかその場を離れることに成功した。
その直後、まるで時間が遅くなるかのように感じられた。「鶴」のくちばしが開くと、目の前に広がる衝撃波が発生した。周囲のテーブル、ソファ、花瓶は瞬時に粉々に砕け、黒い煙が立ち込め、部屋が破壊の跡を残す。
「天下無双と言われた俺の鶴のひと声をあんな形で避けるとは、少しばかり命拾いをしたな」
「鶴」の声には、勝利を確信した冷徹さがこもっていた。その声に続く第二波、再び発せられた衝撃波は、神代を標的にロックし、次の攻撃を狙っていた。
神代は冷静に、「谺」を握り締めて、力押しで反撃しようとするが、手に汗がにじむほど、危機を感じていた。次の攻撃を「谺」で反撃するか、それとも逃げるべきか? 進退窮まったその時、神代はふと、自分の呼吸に気づく。無意識に、息を吸っていたのだが、今、彼の意識は「吐くこと」に集中していた。
その瞬間、何かが閃いた。神代は「谺」をゆっくりと引き、目の前で迫る「鶴」のひと声を静かに待った。そして、何も恐れず、逆に「谺」の力を解放するように、鯉口を切った。
その瞬間、先に「鶴」のひと声が発せられ、神代はその衝撃波を直撃した。だが、神代は左手に持つ念珠が反応したのを感じると、黒龍がその衝撃波を吸収していった。瞬時の出来事だ。
「神代一心流「谺」奥義、死を恐れぬ心也」
神代は全身を込めて抜刀術を繰り出す。「鶴」を横に凪いだ瞬間、恐ろしい力をもってその存在を切り裂く。「神代一心流「谺」追撃奥義、発勝する神気也」。その力強い一撃で、「鶴」を真っ二つに裂いた。
その時、遠くから断末魔の叫びが響き渡り、神代はその瞬間を静かに見守った。
少し震えながらも、「谺」を鞘に収めると、床に散らばった「流」と「影」は、無力感に支配されながらも、静かに動き続けている。神代は試しに再度「谺」を抜こうとするが、それはもう抜けなかった。
「確かに式神呪詛師に対抗するために本体をどうにかしないといけないから、空間渡りの「谺」は必要だったけど、恨むぜ、じいちゃん」
神代は部屋を見渡した。電源を確認し、部屋の光を再び取り戻すと、辺りに広がる破壊の跡が目に入った。抉れた床、粉々になった豪華な机やソファ、花瓶らしきものが塵となって広がり、あの「鶴のひと声」の威力を実感させられる。
「黒龍、助かった、ありがとう」
神代は念珠を優しく擦りながら、感謝の気持ちを込めて呟いた。しかし、念珠からの反応は無かった。まるで、それがすべてを終わらせた証のように。
部屋の中に漂う静寂の中で、神代は再び剣を手に取る。まだ残されたものがあると、どこかで感じながら――。
神代啓示と禁断の式神呪詛師 史家仮名太 @sikatakanata
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