KAC2025に参加する話その5

那田野狐

第1話弓状列島の寝具がその街で流行った訳

 その男。顔は整っている。美形と言って構わない。

 黒い瞳に黒い髪。身長は180センチあり、髪は頭の高い位置に結びつけてなお腰の位置まである長髪だ。

 名前をコジロウ・ガンリュウというが、別名である天下無双というのが通りがいい。

 彼は、長さが身長に迫るという剣をダンスを舞うように振るうC級冒険者の若き有望株だ。


「リルケリルケ。お前エルフだろう?」


「そうだよ?というかここのギルドで5年もいる連中ならみんな知ってる」


 帽子で耳を隠した銀色の長髪の8才ぐらいの幼女が黒パンをスープに浸しながら応える。

 基本的に冒険者は他人の存在の事を気にしない。でも5年経っても見た目がほとんど変わらない彼女がどういう存在なのか?と不思議に思う人間も出てくる。

 今ではマッカランにいる冒険者の間では彼女の存在は広がっていた。


「で、なに?因みに年齢は冒険者歴10年の40才だからよほどのことがない限り敬ってよね」


 リルケリルケは上から目線のガンリュウに向かって素っ気ない口調でいう。

 冒険者ランクはともかく冒険者を10年間やっているというのは大先輩ということだ。


「リルちゃん。上級回復ポーション持ってない?」


 派手ではないが、随分と高そうなローブを着た肩まである緑の髪の魔法使いの女性が、リルケリルケに尋ねてくる。


「ルリカ姐さん・・・ちょっと待って」


 ごそごそと脇に置いていた袋を漁り、5本の陶器を取り出す。


「上級を5本も・・・」


 絶句するガンリュウ。この時点でリルケリルケの冒険者ランクが見た目とは大きくかけ離れていることを思い知る。

 上級回復ポーションなんてモノは1本でも下位階級の冒険者が持っていいアイテムではない。しかもそれが5本。

 ガンリュウは自分が絡んではいけない人間に絡んだことに今さらながら気がついた。


「1本~うんと金貨3枚だっけ?」


 リルケリルケは5本の上級回復ポーションを並べながらいう。


「原価じゃない」


 呆れたようにルリカはいう。


「ルリカ姐さん相手に商売はしないよ。それに材料は自前で取ってきているからね」


 希少と呼ばれる薬草の類も自力で採集しているから実質タダのようなモノだ。


「ありかたく貰っておしょ」



 ルリカは懐から巾着袋を取り出すと、中から大金貨1枚と金貨5枚を取り出す。


「A級冒険者の烈風の魔女ルリカ!?」


 ガンリュウが思い出したように騒ぐ。


「あん?この小生意気な小僧は誰だい?」


「さぁ?私をエルフだろう?って聞いてきた無礼な奴」


 リルケリルケが胡乱気な目でガンリュウを見る。


「そう・・・話に割り込んだって訳ね。私の要件は済んだわ話を続けて」


 ルリカはジロリとガンリュウを見る。


「いえ。何でもないです」


 ガンリュウは逃げ出すように冒険者ギルドを出ていった。


「なにあれ・・・」


「姐さんが烈風の魔女と呼ばれるA級冒険者だって知ったからね。あまりの恐怖に今ごろ布団でも被って震えているんじゃない?」


 リルケリルケは笑う。


「布団?」


「東の弓状列島が発祥と言われる寝具だよ。恐ろしい目に合うと頭から被るらしい」


 リルケリルケはけらけらと笑う。


「今の青年、その弓状列島の出身かい?」


「黒髪黒目だったからねー間違いないよ」


 リルケリルケは蝦蟇口の財布を取り出し上級回復ポーションのお代を入れる。


「そんな面白そうな寝具があるか」


「ありゃ姐さんの寝具しに対する好奇心に火が付いた」


 リルケリルケはしまったという顔をする。

 それから一か月。この街に一大羽毛布団ブームが起こるのであったが、それは別のお話である。。

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