天女降臨〜天宮静女〜

三日月未来(みかづきみらい)

第1話 天女降臨

 三人の女子高生の前に刀剣がゆっくりと上から降りて来た。


「天井からなの? 」


 伝説の天叢雲剣あめのむらくものつるぎと、刀剣が人間言葉で話した。


「ええええーー 」

「うそー」


 刀剣は金色の光に包まれ透明になって消えた。


 女子高生三人は目をこすって幻影なのかと顔を見合わせた。

刀剣が消えた場所に天女姿の美しい紫色のロングヘアの美少女が現れた。


 瞳も髪と同じ紫色で輝いている。

この世の者とは思えない姿に女子高生三人は退く。


 あやかしかと思い用心した女子高生のひとりが言った。


「ええええ、こんなこと聞いたことないわよ」


「妾は天叢雲あめのむらくもの化身でござる」


「妾は皆を助けるために天界の女神の命を受けやって来たのでござる」


天女の説明が続いた。


「お役に立つ時がござるやも知れないでござる」


「その時は妾が皆の力になれるでござる」


 天女は再び光輪に包まれた。

神聖女学園の制服姿に変身して天女は現れた。


 声を失う三人に女子高生姿の天女が挨拶を続けた。


「本日から、生徒会に参加させて頂く天宮静女でござる」


静女しずめと呼ぶと良いでござる」


 静女の紫色の長い髪と長い睫毛の中で紫色の瞳がキラキラと妖しく輝いている。

生徒会にチート級の伝説の天女が加わった。




 高天原たかまがはらの伝説みたいなことが神聖女学園の生徒会室で起きたのである。


 時代が音も無く動き始めた。

二度と不埒な輩が現れないように・・・・・・。

天女の無意識が呟いた。


 神聖女学園の生徒会室は新政府の執務室になった。


 生徒会長は、生徒会の執務室で世直し本部を立ち上げ女子高生に協力を求めた。

神聖女学園の中でも外でも、女子高生の協力の声が上がる。

女子高生パワーが全国規模で拡大して、全国生徒会連合に女子高生支部が結成された。


「未来のために、みなさんの協力があれば、嬉しい限りですわ」


 全国生徒会代表が協力者にネットライブで伝えた。




 天女天宮静女は、生徒会長側近として身辺を護ることになった。


天女が聖女生徒会長を護る時代になった。


 静女はござる口調で説明した。


「伝説は長い時の流れの中でいつの時代も間違って口伝されているでござる」


「そして歴史は書き変えられているでござる」


「刀剣の姿は身を隠す魔法の様なもので、天女の姿が本物でござる」


皆を安心させる静女しずめだった。




「まるで魔法みたい」

女子高生が震えた声で呟いた。


 神聖女学園に集結した女子高生は新しい時代の重鎮になった。


 学園の敷地内にある大型ショッピングセンターに地下通路から移動することが出来た。


 まるで新政府誕生のために準備されたような地下通路だった。

ショッピングセンターのカフェからは神聖女学園が見渡せる。


 天女の静女しずめは、都心部の超高層ビルを眺めていた。

小さな空中浮遊自動車は遠過ぎて見えない。


「静女様、何かありそうですか」

「生徒会長、心配ないでござる」


天女と生徒会長の会話に友達言葉は聞こえない。


「それなら、良いのですが・・・・・・ 」


「生徒会長は、心配性でござるか」

「いえ、そんなことはありませんわ」


「ここからの見晴らしが良いので見惚れてるでござるよ」


「静女様、学園都市が一望出来ますからね」

「静女で良いでござる。生徒会長の側近なのでござる」


「じゃあ、静女、何がいいかしら」

「拙者は、久しぶりの現世なので、

クレープと言う食べ物を試してみたいが良いでござるか、生徒会長」


「クレープね、わかったけど、康代でいいわよ」

女子高生の信美と利恵も苦笑いを浮かべていた。


「拙者、なんか、変なことを言ったでござるか」

「なんか時代劇みたいだよね、拙者なんて」


「そうか、そうか三百年ぶりの現世じゃからのう」


静女は微笑んだ。


 静女は再び光に包まれると昔の姿に変身して見せた。


「どうじゃ、昔の姿じゃ」

「静女は、すぐ変身出来て便利ね」


信美と利恵も康代の言葉に何度も頷いた。


 静女は三人以外には見えていない。 


「静女には女性更衣室いらないわね」

「康代、なんじゃそれは」


「静女さん、体操着に着替える時のお部屋よ」

「そうか、信美、便利でござるのう」


「静女様の方が便利ですわ」


利恵も加わってはしゃいでいた。


 遠くに見える都心の超高層ビルが紫色の霧に包まれて航空障害灯のランプが赤く点滅していた。

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