背中に「天下無双」
るるあ
掻巻布団に天下無双刺繍でダンス
空と海の境界、水平線。
今そこは、きらきらと虹色に光って見える!
「父さま!カンスゥイー・アークを確認しました!!」
“千里眼”スキル保持者である私は、この神聖な光景を、辺境伯である父にお伝えする。
「うむ!確認ご苦労!
それでは、奉納舞である“ヨサコゥイソーラン”を始めたいと思う!
皆のもの、配置につけ!!!!」
父は私の頭をガシガシ撫でながら(ちょっと痛い)、揃いの衣装を纏った我が騎士団員達に覇気の篭った大声で通達。
「「「「「おう!!!」」」」」
待ってました!と、地響きのような応答。我が騎士団精鋭達は、それぞれの配置に付き、構えをとった。
入り組んだ海岸線の、1番長く海に伸び、そして切り立った崖の上。
皆の頭に巻かれた長細い布や衣装の裾が、波のように海風にたなびいていた。
★★★★
辺境の港湾都市、ノーロウド。
ここでのみ確認される、水平線が虹色の煌めきを放つ現象―通称“カンスゥイー・アーク”は、海の神様からの祝福と伝えられている。
それが起こる今日は、隊列を組み、集団で息を合わせてダンスを行う日。
ご先祖代々伝わる奉納舞、“ヨサコゥイソーラン”を、陸地から海へと長く続く、断崖絶壁のこの場所で行うのだ。
そして、
「このダンスを制する者が、伝統のカイ・マーキ布団を装備する栄誉を得る。来年度の神事には指揮を執って貰うぞ!!」
しっかり努めよ!と父が激を飛ばすと、うおおお!!!と盛り上がる騎士たち。
しきたりの通り、この演舞の指揮する者が背中に“天下無双”の豪奢な刺繍入りローブ―カイ・マーキ布団を継承してゆくことになっているのだ。
現在そのカイ・マーキ布団は、辺境伯であり総司令の我が父が纏っている。
カイ・マーキ布団……。
カイマキふとん………。
………?
「掻い巻き布団?」
寒い冬、ばーちゃんちに泊まりに行った時に掛け布団に追加されてたアレ?
『布団は重くないと掛けた気がしねぇだろ?それにな、夜中に厠に行くときはこれを肩に引っ掛けていけば風邪引かんどぉ〜!
ちゃ~んと、
ほれ、お前さんが夜中、ばいくに乗っていぐ時着てた、あの頃のやつだべ!』
そう言って広げた先には、袖のついた着物状の寝具の背中部分に、“天下無双”……。
………。
異世界転生ってやつ?
呆然と騎士達の奉納舞を眺めていると、頭をポンポンと叩かれ、はっとそちらを見上げる。
「アンジェリカ……いや、杏樹。」
思い出したんだな?と囁き、目線は奉納舞に固定しながらも私の頭をぐしゃぐしゃとかき混ぜる父上。
「ほれ、今はお前の婿が決まる大事な奉納舞なんだから、しっかり見ておきなさい。
……
お前の推しは、副団長補佐の、
………ななな何ですと?
全てご存知である、とな!?
「俺の話を聞いてくれるか?」
父上の言う事には。
第三王子であった、現辺境伯の父。
生まれて早々に前世を思い出したが、同じく転生していた祖母――現・
そんな中、辺境ノーロウドに、謎の奉納舞が代々伝わるという噂を耳にする。
……カンスゥイー・アーク?
俺が美紀子にプロポーズした、環水平アークじゃねーか!!しかも掻巻布団って!!
即ノーロウドを調査、長女(姫騎士)が前世愛した嫁と発覚⇒即時確保(らぶらぶ)。
それで。
“今世こそは杏樹に最高の幸せを”の願いを
なお、継承権は返上できなかったそうだ(多分、転生者だからではないかと思われ)。
で、私生まれるが、どうやら憶えてない……?よし、あのお気に入りの掻巻布団をちらつかせよう!あっ、じゃあついでに奉納舞で、両片思い状態の原因、ヘタレ
来たぞ環水平アーク!奉納舞!
⇒イマココ!!
「……という訳だ。
乞うご期待!!と、笑顔で私を見る父上。
えーと……。
こんな時どんな顔したらいいか分からないわ……?
とりあえず、マティアス様が奉納舞中ずっと、私を見つめ続けているのは気の所為ではない事が分かりました……。
顔が、熱いです………!!!!
★★★
ちなみに、私が記憶を取り戻すきっかけになるに違いないと、ばあちゃん……いや、皇后様が新しい掻巻布団の背縫いを、直々に行ったものが届いているそうです。
それを、
背中に「天下無双」 るるあ @ayan7944
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